まだ少し早いかもしれないが、いずれ金利が大きく上がる時が来る。
それは、国や中央銀行による政策的な金利の引き上げによる金利上昇だけではない。
もっとやっかいなのが、市場金利の上昇という経済の現場から起こる金利上昇である。
ふたつあって、ひとつめは債券価格の下落による債券流通利回りの上昇が、もういつ発生してもおかしくない。
最近はインフレ鎮静化による利下げ期待が大きくなっているが、甘くみない方がいい。
なにしろ世界の債務残高は世界GDPの3倍を超しており、過去12年ほどで世界GDPの1個分も膨れ上がっているのだ。
過去12年、つまり先進国中心にゼロ金利政策を推し進めていた間に新規契約された債務勘定である。
それらの債務勘定は、いま世界的なインフレ圧力による金利上昇に曝されている。
それらの借り換え時には高まった金利水準に、果たしてどこまで対応できるか?
なにしろ世界GDP1個分という巨額の債務残高がゼロ金利時代に積み上げられているのだ。
その一角でも借り換えができなくなれば、債券市場はじめ世界の金融マーケットは大きなショックに襲われる。
債券売りが殺到するのは避けられず、その分の債券流通利回り、つまり市場金利は急上昇するという図式だ。
もうひとつが、株式でも債券でも金融マーケットの一角が大崩れすると、巨額の資産デフレが発生する。
資産デフレ? バランスシートデフレともいって、資産勘定が大きく目減りしたのに、負債勘定はまるまる残った状態をいう。
16年前のリーマンショック時、先進国中心に史上空前の金融緩和を断行した。 政策金利もゼロに引き下げた。
すさまじいカネ余りを受けて、世界の金融マーケットは大きく膨れ上がった。
それが大崩れとなるや、投資していた資産勘定の大きな部分が蒸発したように目減りする。
一方、借り入れ金や受け入れ投資で膨れ上がった負債勘定はまるまる残る。 これは、きつい。
カネ余りバブルに踊ってきた法人投資家、つまり企業や金融機関そして機関投資家のいずれもが巨額の資産デフレに襲われる。
マーケット価格が元の高値に戻ってくれない限り、どの法人投資家も巨額の資産デフレにのたうち回ることになる。
すこしでも資産デフレを解消すべく現金を確保しようと、保有資産の売りに走ればマーケットをさらに下落させる。
かくして、資産価格が大きく目減りした分だけ、それまでのカネ余り状態は一気に収縮する。
資産価格の大幅下落による金融マーケットの急収縮は、市場での金利水準を跳ね上げるわけだ。
これら、ふたつの金利上昇を見たくもないとするなら、いまの金融マーケットが永久に続いてくれと願うしかない。
それは難しい願望だろう。