米国の金利引き上げが打ち止め、そして引き下げもありということで、米国株が上昇している。
それを受けて、東京株式市場もすさまじい勢いで買われている。
日米ともに、投資家心理は買い参戦の方向へ大きく傾いてきたようだ。
われわれ本格派の長期投資家からすると、くわばらくわばらの一言である。
報道によれば、インフレ克服の兆しが出てきていて、先般の長期金利5%乗せがピークとみる向きが増えているようだ。
その根拠として、物価上昇のトレンドを見る限り、インフレ高進の懸念が薄れてきたということだろう。
甘いと思う。 インフレが収まってきたといっても、既に上がってしまった物価水準はそのままだ。
つまり、ここまでのインフレ分だけ価格全般が上昇し、生活や経済活動が新しい価格体系に対応しなければならない。
大きく上昇した新しい価格体系が定着していく間に、生活や経済活動の現場ではいろいろな混乱が続く。
低所得層の人々は生活苦で、さらなる賃上げを要求することもあり得る。 これは、根の深いインフレ要因である。
企業の方も、インフレ分の仕入れコスト上昇をどう吸収し、上手く売値に乗せられるかどうかが、頭痛の種となる。
首尾よく価格転嫁できた企業はいいが、出来なかった企業は経営が難しくなる。
これらを勘案すると、企業全般に業績動向が厳しくなる懸念は大きい。
さらに指摘すれば、ここまでの金利上昇だけでも、企業の収益動向を相当に圧迫しているはず。
いずれ、多くの企業で業績悪化の見通しを発表するところが広まってこよう。
どれもこれも、株価にとっては無視できないマイナス材料となる。
これらのマイナス材料の行き着く先は、景気後退と物価の高止まり、つまりスタグフレーションである。
スタグフレーションとなれば、消費は落ち込み業績悪化で株価の低位低迷は避けられない。
なのに、投資家や市場関係者の間では、信じられないほどの楽観が蔓延している。
いまだ、カネ余りバブル高の余熱に浸っているのか、さっぱり理解できない。
われわれ本格派の長期投資家からすると、こんなところでの買いは絶対にない。
もう既に、マーケットの熱狂からは遠く離れているが、さらに売れるものがあれば利益確定しておきたいところだ。