資産運用ビジネスで難しいのは、成績を出そう出そうと頑張り過ぎないことだ。
とはいえ、機関投資家は顧客から預かった資産を増やすことで飯を食っている。
どうしても運用成績を高めて、より多くの預かり資産を獲得しようとする。
逆に、運用成績が振るわなかったら契約は解除され、他の運用会社へもっていかれてしまう。
したがって、運用成績にこだわるのは、機関投資家の性(サガ)といってもいい。
それが機関投資家をして、音楽が鳴っている間は踊り続けなければならないと、揶揄されることに。
いくら運用者の判断で、ここは売って利益確定しておこうと考えても、上昇相場を途中下車できないのだ。
下手に売って、その後も上昇相場が続いたりすると、成績は置いてきぼりを食らう。
それだけは絶対に避けなければならないと考えると、上昇相場にはずっとついていかざるを得なくなる。
機関投資家のいずれもが、音楽が鳴っている間は踊り続けなければならないの呪縛に、縛り付けられているわけだ。
ということは、大崩れしかかっている世界のカネ余り相場だが、機関投資家はギリギリまで追いかけることになる。
そして、最後に皆して暴落相場に放り込まれて、成績急悪化でのたうち回ることになる。
おもえば、2008年9月に発生した、リーマンショックの時もそうだった。
そのずっと前から、世界の金融マーケットではいろいろな問題がくすぶっていた。
そして、きわめつきは2007年8月のサブプライムローン問題と相前後した、パリバ銀行の新規契約停止だ。
米国で発生したサブプライムローン問題は、マスコミを中心に大騒ぎとなった。
一方、パリバが突如として発表した証券化商品の新規契約停止は、世界の金融マーケットに衝撃が走った。
それまで、金融工学を駆使した証券化商品が世界の金融マーケットで大ブームとなっていた。
そのブームに冷や水を浴びせたわけだが、世界の機関投資家たちは相変わらずの踊りを続けた。
その後も折にふれて、金融マーケットを揺さぶる悪材料が発生し、最期にリーマンショックと相成ったわけだ。
今回も、3月の米地銀3行の経営破綻や、中国の大手不動産会社恒大の経営不振など、いろいろ続いている。
おそらく、これらはいずれ到来する世界の金融マーケット大暴落の前兆となるのだろう。
われわれ本格派の長期投資家はずっと前から、史上空前といわれている金融緩和バブルから遠く離れている。
つまり、音楽は鳴っているが、もうとうの昔に踊りはやめている。
そして、大暴落相場でのバーゲンハンティングに準備万端である。
成績は追いかけない、ただ後からついてくるだけのこと。 それが、投資というものだ。