資産運用立国を唱えるのはいいが

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首相の唱える資産運用立国に金融界は色めきだっているが、おいおいちょっと待ってくれだ。

先ずは来年からはじまる新NISAの流れを、いかに取り込んでいくかに業界の関心が集まっている。

現行のNISA制度と比べ、大幅に金額が増加されるから、それだけビジネスチャンスが大きいと考えるのだろう。

なにしろ、999兆円もの個人マネーが預貯金に眠っている日本だ。 (日銀速報、2023年3月末)

税の優遇に誘引されて預貯金マネーが大きく資産運用にシフトする、そう期待するのは金融界の勝手である。

しかし、日本の金融業者で一体どこが預貯金マネーの受け皿としての実績を積み上げているのだろう?

預貯金に眠っている個人マネーが安心し信頼して資産運用を託したくなる運用実績など、ほとんどないのが現実。

その中核となる投信も大手証券や銀行の子会社で、歴史的にも投信販売が優先されてきている。

それが、投信ファンドの「大量設定・大量解約・野たれ死に」の悪弊を延々と積み上げてきた。

その結果が、6000本を超す投信ファンド数となっており、株式市場に上場している企業数よりずっと多い。

最近でこそ、独立系の投信中心に10数年の運用実績を誇る(?)ファンドが、ようやく増えてきた程度。

そもそも、資産運用ビジネスは10年はおろか20年30年の運用責任を果たすべきもの。

それに対し、一体どれだけの金融業者が長期の運用責任を果たしていく準備と覚悟を持っているのだろう?

長期の積み立て投資に対応できるだけの経営の安定性も重要となってくる。

なによりも、30年40年の時間軸で投資運用を展開していける本格派の長期投資家かどうかだ。

目先のマーケット変動を追いかけては、売買益を積み上げていくディーリング運用とは、そもそもが違う。

それを資金運用というが、年金などを運用している機関投資家を中心に世界中どこでも運用の定番となっている。

そんなの、たまたまこの40年、世界の債券や株式市場が歴史に例のない上昇相場を続けただけの成果にすぎない。

マーケット動向次第の資金運用でもって、個人の資産形成を云々するのは乱暴すぎる。

もっとも、20年ぐらいたてば、どこがホンモノの資産運用ビジネスを提供してきたかが明白となる。

その時になって、ドタバタ運用の商品で資産形成を夢みた人たちの失望した姿を見たくはない。

ところが、それだけの矜持を日本の金融ビジネス関係者はもっているかどうかだ。