日経新聞で編集委員を務めた前田昌孝氏が独立して、マーケットエッセンシャルという有料配信をしている。
ベテラン新聞記者の鋭い観察眼と、実に広く詳細なデータ収集力を駆使して、毎週鋭い指摘をしてくれている。
メディア出身ということもあって、いま起こっている事を客観的な視点から深く掘り探っての指摘だ。
われわれ本格派の長期投資家からすると、そんなの業者の悪弊だとバッサリ切って捨ててしまう案件もしばしば。
それに対しても、前田主筆は長年にわたって客観的な報道を心掛けてきた職業習性もあって、ていねいに対応している。
逆をいうと、日本の金融業者がそういった彼の論点をしっかり受け取って、猛反省すべきであろう。
今週のマーケットエッセンシャルでも、投資家がどれだけ儲けているかの指標であるKPIをベースに、厳しい指摘がなされている。
金融庁が主導して、2018年から各社顧客のKPI数字を公表するよう業界に働き掛けてきた。
前田氏は、その後のKPI動向を追って、いろいろな裏事情も含め詳細なデータを駆使しつつ、彼の論調を展開している。
一言でいうと、日本の金融業者が販売の論理でもって、運用ビジネスにも大きな影響力を及ぼしている様が伺える。
相変わらずのことだが、それによって「貯蓄から投資へ」の文化が、なかなか根付かない遠因をつくっている。
遠因? そう、全国津々浦々に展開している、証券・銀行・郵便局のいずれもが販売の論理でもってビジネスをしている。
一般生活者が投資を考えるときには、どうしても身近な証券・銀行・郵便局の窓口に相談してしまう。
そして、そのまま販売の論理に吸い込まれたまま、投資商品を購入することになる。
販売の論理では、金融商品を売って手数料を稼げば、それで一件落着である。
ところが、投資家顧客にすると資産形成という10年はおろか20年30年と続く長い旅のはじまりである。
その長い旅にずっと付き合おうとする責任意識も覚悟もない販売業者が、窓口案内をしているのだ。
そんな展開では、その時々の上昇相場に乗った投資収益を得ることがあっても、長期の資産形成は期待できない。
いま、マーケットエッセンシャルによると、20代の若い人たちの投資が急増しているという。
ずっと指摘してきている、壮大な金融緩和相場の最終局面で投資をはじめた人たちの末路が大いに懸念される。
この悪弊を打ち破るには、独立系の運用業者や投信が、もっともっと増えるしかない。
ちなみに、マーケットエッセンシャルは、mmaeda@marketessential.jp へ問い合わせを。