技術革新と張りぼて経済

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いま世界はチャットGPTとか生成AIとか、すごいスピードで技術革新が進行している。

その部分だけをみるに、新技術が世界経済を力強く推進していくかの期待を与えてくれる。

ちなみに、技術革新が進むにつれ、それに乗り遅れた人たちの、たとえば1万人の雇用を奪う。

その一方で、新たなビジネス展開が開けてきて、10万人の雇用を生み出すといった米大企業の例もある。

そういった例はともかく、世界全体でみると所得格差の拡大と、先進国も含めて低所得化が進んでいる。

それを象徴しているのが米国株市場における一部の勝ち組企業群と、その他大多数である。

アップルの株価時価総額が3兆ドルを超えたなど、華々しい成功例がメディアを賑わす。

GAFAMやテスラ株などが買われる横で、大多数の企業の株価は冴えない値動きに終始している。

まだまだカネ余り株高の勢いは続いているものの、それは一部の企業群への突出となっているだけともいえる。

株価の先見性とよく言われるが、注目したいのは大多数の企業の株価が鈍い値動きをしている点だ。

鈍い株価動向は、なにを先見しているのだろうか? おそらくだが、張りぼて経済への警戒であろう。

張りぼての経済? そう、ゼロ金利とマネーを大量に供給しさえすればでやってきた金融緩和政策の産物である。

よくいわれるように、一部の高所得層へ富の集中は進んだが、大多数の人々は低所得化へ追いやられた。

その結果、高級ブランドなどに代表されるラグジュアリー消費は大きく花開いている。

一方、大多数の人々による一般消費はさほど伸びていない。 それが中身の薄い経済となっているわけだ。

そういった現状に対し、世界的なインフレ圧力と金利上昇という実体経済からの刃が突き刺さってきている。

この刃は、これからじわじわと企業経営全般にブレーキをかけることになっていく。

つまり、業績への圧迫と資金繰り難が表面化してくるわけで、それが株価の下押し圧力となっていく。

その流れが表面化してくると、そこは張りぼて経済の弱いところで、あっという間にしぼんでいく。

その横で、インフレ下の生活苦が世界中あちこちで賃上げ要求を高めさせ続ける。

いろいろが重なってきて世界経済は苦しい展開となっていくが、それは仕方ないものと考えよう。

金融緩和政策で膨れ上げてきた張りぼて経済が縮小に向かうにあたって避けて通れない現象である。

その先では、金利が存在し、需要と供給で動くまともな経済の姿が見えてくる。