世界の運用ビジネス、大転換期に

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この50年ちょっとを振り返るに、世界の運用ビジネスは大きな転換期に差し掛かっているといっていい。

1980年代から狂ったように突っ走ってきた世界の投資運用路線そのものが、おかしかった。

いつも指摘しているように、そもそも諸悪の根源は年金運用の本格化である。

70年代の終わりごろから年金が世界最大の運用マネーに躍り出てきた。

その年金マネーの獲得競争が激化し、「世界の運用が、マーケティングのビジネスに変容してしまった」のだ。

もともと投資運用は、許容できる範囲のリスクを取って、より多くのリターンを求めていくものである。

リターンが得られるまでには、それなりの時間がかかるのは、当然のこととして受け入れられる。

その成果として、社会の富の増進となって経済のあらゆる分野と人々の生活を潤していくわけだ。

ところが、年金マネー獲得のマーケティング競争では、毎年の成績が問われる。

のんびりと、ある程度の時間をかけて投資リターンを積み上げていきますなんて、言ってはいられない。

どうしても毎年の成績を追い回す短期投資や、ディーリング運用が主体となってしまう。

その方向へと、80年代に世界の機関投資家運用全般が様変わりとなっていった。

そこへ、先進国中心に金融緩和政策をどんどん深掘りしていき、マネーをこれでもかこれでもかと供給した。

それで金融マーケットは大活況となったが、短期の資金運用とディーリングが支配的となっていった。

その結果、毎年の成績つまり数字を追い回すだけの無機質な運用が、いまや世界経済を動かしているのだ。

運用成績という無機質の数字追いかけでは、世界の富の増殖にさして貢献しない。

それが、先進国を中心にして成長鈍化と、低所得層の拡大という結果をもたらしている。

ここへきて、世界的なインフレ圧力と、それに伴う金利上昇という実体経済からの刃が、突き刺さってきだした。

もう時間の問題で、金融緩和のバブルは吹っ飛ぶだろうが、それは世界の機関投資家運用への鉄槌となる。

ひたすら運用成績という数字を追いかけてきた世界の運用ビジネス全般は、奈落の底へ叩き落されよう。

世界のマーケットは修羅場のような大混乱に陥ろうが、その横で実体経済をベースとした投資本来の姿が浮上してこよう。

つまり、50年ぶりに長期投資が復活するのだ。 ようやく、まともな投資運用ビジネスが戻ってくるのだ。

そう、世界の運用ビジネスの大転換期だ。