どのビジネスも、顧客があってのもの、また顧客の満足があってこそ商売が続けられる。
商品の販売では、食品ならば味や美味しさ、栄養度などで顧客の満足が諮られる。
もちろん、接客時の対応ぶりやサービス精神なども、顧客満足に跳ね返ってくる。
耐久消費財であれば、その商品の性能や使い勝手、耐久性なども評価に直結してくる。
総じて、顧客の評価や満足は即座に定まったり、せいぜい一定の期間を経て定まっていく。
一方、資産運用ビジネスにおいては、顧客評価の時間軸が10年はおろか、20年30年と、やたら長い。
その間に、景気変動や経済環境の大きな変化だけではなく、地政学リスクなどにも出くわす。
それらに直面して、おたおたするようでは顧客の安心や信頼、つまり本当の満足にはつながっていかない。
もっとも、そういった大きな状況や環境変化のリスクを完璧に回避するなどは、投資している以上は難しい。
難しいながらも、受けるダメージを最小限に食い止めるのが、運用責任であり運用経験というものだ。
なにが起こるか知れたものではない将来に向かって投資運用していく、それが資産運用ビジネスである。
そうであるならば、運用サイドはお預かりする資産の性質や目的、そして許容される時間軸を明確に定めなければならない。
それが、顧客責任の第一歩である。 資産運用という顧客ビジネスを展開する以上、絶対に疎かにできない。
ところが、世界の運用業界は顧客資金集めのマーケティングで、目先の成績を競うばかり。
年金など機関投資家運用では、マーケットの価格変動に対し、それをどれくらい上回っているかに終始している。
そして、なんとかショックといった大きな暴落に直面するや、不可抗力的な下げだったと責任逃れをする。
運用資金を預ける年金サイドも自分の資金ではないから、それは仕方ないで済ませてしまう。
なんとも、おかしな現状に陥っている。 それが、個人の資産を預かり運用するビジネスでも横行しているのだ。
最近の話題となっている解任劇でも、報道では親会社が預かり資産を10倍にしろということが発端らしい。
他社も資産を殖やしているからというが、どっちもどっちで無責任極まりない。
投資家顧客の資産をお預かりする以上は、どれだけ責任をもった運用をお届けし続かるかが問われる。
そのあたりの意識はまるでなく、ただ預かり資産を増やせというのは、その場しのぎに過ぎる。
手数料稼ぎの金融ビジネスではいいとしても、資産運用ビジネスでは考えられないことだ。