今日の日経新聞に、セゾン投信の中野会長の解任に関する記事が大きく出ている。
親会社にあたるクレディセゾンが、預かり資産の増加で他社に大きく後れを取っている点を問題視してのこと。
たしかに、SBIや楽天証券はこの10年ほどで預かり資産を数兆円の規模にまで増加させた。
それに対し、セゾン投信は5000億円ほどの顧客資産額にとどまっている。
といっても、それは中野会長をはじめとするセゾン投信の社員たちが、地道に投資家顧客を開拓してきた成果である。
それだけ多くの投資家から信頼を集めているわけで、資産運用会社としては立派なものである。
ところが、日経新聞の記事によると、親会社は預かり資産の増加にもっと注力すべきということらしい。
このあたり、資産運用ビジネスの社会的責任や道義という本質からは、大きく逸脱している。
そもそも大事な虎の子を託して資産の増加を期待する投資家からすると、預かり資産の増加競争など望んでいない。
それよりも、資産運用会社としては経営がブレることなく、長期の資産運用に邁進してもらいたい。
その信頼と安心感こそが、投資家顧客にとっては絶対といっていいほど重要な運用会社との絆である。
もっとも、証券会社や金融機関からすると、預かり資産の規模とそこからくる収入の最大化が経営の主眼である。
そういったビジネス感と、資産運用会社のあり様とはまったくの別物である。 間違っても混同してはならない。
具体的には、証券会社や金融機関が展開する運営ビジネスは手数料収入などを稼ぐのが目的である。
したがって、そこに群がってくる投資家顧客たちも、その時々のマーケットで上手く利益を得られれば良しだ。
今度はこれが儲かりそうだといった営業トークに乗っかって、次から次へと投資対象を追いかける。
その挙げ句、思ったほどには儲からず、投資は難しいとかリスクを多いといって嘆く人の多いこと。
一方、われわれ資産運用会社は自分とこが得意とする運用手法とその実績を訴えて顧客資金を集める。
集めるというよりも、顧客の方から集まってくるのが本来の姿である。
なぜなら、資産運用会社がやるべきは、運用能力の向上と顧客口座管理に100%のエネルギーを注ぐことだからだ。
それが、資産運用会社の矜持であり、虎の子をお預かりする社会的ならびに道義的責任である。
その点、営業とか宣伝広告などに注力して運用資金を集めようとするのは、資産運用会社としては本末転倒である。
今回の、セゾン投信の問題は資産運用会社としてのあり様を、改めて考えさせてくれている。