この3週間の日本株の上昇ぶりは、1980年代以来はじめてともいえる力強さを見せつけてくれている。
相場は勢いのものと昔からいわれるが、まさしく勢いそのものだ。
この勢い相場に対し、ここで買う理屈も、株価が上がる理由もいらない。 勢いに乗る、それだけでいい。
日本に多い順張りの投資家にとっては、待ってましたの勢い相場である。
32年ぶりの高値だ。 あと6000円の上昇で、89年末につけた史上最高値を更新すると、大騒ぎしている。
日銀も、この勢い相場は歓迎だろう。 簿価37兆円ちょっとの株式ETF保有で、23兆円の評価益を得ているという。
そもそも、中央銀行が株式購入や株式ETF保有に走るなど、考えられないこと。
それを、前任の黒田総裁が一気に加速させた。 株価上昇がデフレ脱却に欠かせないという理屈でもって。
その結果が、いま23兆円の含み益として日銀の懐を潤している。 中央銀行の株式投資が正当化されるかのようだ。
まさに、「株価が上がれば、すべて良し」の展開となっているが、さてさてどうなることやらだ。
この上昇相場、明日にでも突如として崩れ出すやもしれない。 勢いの相場なんて、そんなものだ。
大体からして、株価が上がるどころか、大きく下げる要因が目白押しなのだ。
世界的なインフレ圧力は少し和らいできたようだが、ここまでの諸物価上昇は、そのままずっと続く。
つまり、それだけ生活コスト全般の上昇となって消費にブレーキをかけるし、賃上げ要求となっていく。
また、企業にとっても原材料や賃金コストの上昇となって利益を圧迫、将来に向けての拡大投資意欲を削ぐ。
そこへ、インフレを抑えようとた金利上昇は、いよいよこれから経済活動全般に重くのしかかってくる。
金融マーケットでも債務者負担の重荷が、いつ火を噴くかの警戒は高まっている。
どれもこれも、ここまでの超のつく金融緩和政策の限界と、その歪みの露呈を示唆している。
具体的には、ゼロ金利とマネーの大量バラマキで膨らませてきた張りぼての経済だが、あちこちで穴が開く。
そして、もともと中身の薄い張りぼての経済だから、あっという間にしぼんでいく。
それは、世界の債券市場や株式市場での急落を誘い、市場金利の急上昇とマネーひっ迫を招く。
金融マーケットや経済の現場での大混乱は免れないが、世界経済の健全化には避けて通れない道である。
われわれ本格派の長期投資家にとっては、待ってましたの正常化である。