世界を見わたすと、景気や経済はもちろんのこと金融マーケットも、難しい局面にあるといえよう。
インフレも、ちょっとやそっとでは鎮静化に向かってくれそうにない。
つれて、米欧の金利もさらなる引き上げはあっても、利下げに向かう状況にはない。
それもあって、ここまでの金利上昇だけでも、世界中の債務者や企業経営にずっしりと重く影響しだしてきている。
その影響は、これからじわじわと表面化してこよう。 米銀やスイスクレディスイスの破綻は、まだほんの先駆けにすぎない。
当然のことながら、世界の債券投資家はさらなる評価損の増加を恐れて、戦々恐々としている。
株式市場も膠着相場の様相を見せている。 1年半前までの上値追いの勢いは、どこにも見られない。
機関投資家の運用現場では、じりじりした気分で相場動向を凝視しているはず。
なにしろ、彼らはマーケット動向につかず離れずをもって運用としている。
株式市場などが膠着相場に陥ったりすると、値動きのサヤを取ってはの売買益を稼ぎようがない。
かといって、彼らは自分の判断とリスクで、マーケットから離れた独自行動はとれない。
たとえば、この膠着相場の先では大きな下げがあると読んで、さっさと売りのポジションを取ることはできない。
なぜなら、自分は売りに転じたが、マーケットは相変わらず膠着相場を続けたら、成績差をつけられてしまう。
マーケット並びに競争相手たちから成績差をつけられると、運用失敗の烙印を押されてしまう。
すごい日和見の運用姿勢だが、それが世界の運用マネーの過半をにぎる機関投資家たちの実態である。
実は、この点こそが世界の株式市場を方向感のない相場展開にしている最大の要因なのだ。
ともあれ、そういった世界の状況も、われわれ本格派の長期投資家からすると、ちっとも難しいものではない。
世界的なインフレ圧力と、それにともなう金利上昇は実体経済から突き付けられた刃である。
ゼロ金利と金融緩和の深掘りを進めて築いてきた張りぼての経済に対し、経済合理性の刺客が差し向けられたわけだ。
したがって、この先は張りぼての経済と金融マーケットが急激にしぼんでいくことになるのは避けようがない。
もちろん、そうなったら困る世界中のプレイヤー達が、じっと成り行きを凝視している。
かといって、インフレや金利上昇は止められないので、彼らにとっては難しい展開となっているわけだ。
常に経済合理性をベースに行動する、われわれ本格派の長期投資家からすると、もう止められない流れだ。
つまり、全体方向は金融バブルの崩壊と金利の正常化、その先の世界経済の健全化である。