日本企業のイノベーション力が落ちていると、しばしば指摘される。
ひとつの要因として、国の過保護政策が挙げられよう。 それによって、国全体に甘えがはびこっている。
その最たるものが、なんとか対策である。 なにかにつけて、日本はすぐ対策を講じろとなる。
たとえば最近の例では、ロシア軍のウクライナ侵攻で世界の化石燃料価格が急騰した。
ガソリンなどの価格が急上昇すれば、生活者や企業経営を圧迫し、景気を冷やしかねない。
そこで、政府は石油の元売り各社に価格転嫁しないよう対策予算を割り当てている。
その結果、末端のガソリン価格などはウクライナ問題の前とさして変化ない状況にある。
ここからが、なんとか対策の問題点となる。 たしかにガソリン価格などの急騰は抑え込んだ。
それでもって、世界的なインフレ下にありながらも、生活者や企業経営は一息つけてありがたい。
ところがだ、ガソリン価格などが急騰したらしたで、エネルギー節約とか代替燃料シフトの動きが高まる。
それが、経済のダイナミズムというものである。 イノベーションの根源でもある。
1970年代の公害問題でも、石油ショック時でも、企業はすさまじい努力を強いられた。
降りかかった問題の大きさから、国の対策ではとうてい間に合わない。
それで、どの企業も生き残りをかけて、公害対策や省エネに突っ走った。
そこで生まれてきたのが、世界に関たる公害対策技術や省エネ機器群である。
まさに必要は発明の母といわれるように、切羽詰まった状況下から革新は生まれるわけだ。
そう過去を振り返るにつけ、ここ最近のなんでもかんでも国頼みの風潮は甘いと言わざるを得ない。
それが積もり積もって、国の借金は増えるは、企業のイノベーション力は低下するはとなっているのだ。
どうしたらいい? 国のインフレ対策は一般生活者、とりわけ生活弱者に重点を置く。
一方、企業には自助努力とイノベーションによる打開策を求めるだけでいい。
それでもって、企業の間でそれぞれ適者生存の生き残り策を講じるよう促すのだ。
国にしても、これだけ財政が悪化しているのだから、なんとか対策とやらは一刻も早く止めた方がいい。