日本の個人や家計の預貯金偏重ぶりは、度が過ぎているどころの話ではない。
ずっと長いこと、超低金利やゼロ金利政策の犠牲となって、個人や家計は多くの富を失ってきた。
多くの富を失ってきた? そう、得べかりし利子所得が、あまりにも巨額なのだ。
980兆円を超す預貯金残高からすると、ゼロ金利では9800億円ほどの利子収入にしかならない。
それが普通の金利水準なら、3%で29兆円、4%で39兆円の利子所得となる。
とんでもない金額差である。 そんな現状に付き合ってはいられないと、米国など海外ではさっさと動き出す。
動く? より良い利回りや投資リターンを求めて、預貯金以外の投資を求めて動き出すのだ。
そう、ゼロ金利下で大事な虎の子を預貯金に置いたままなんて、世界では考えられないこと。
ところが日本では、ゼロ金利でも元本さえ安全ならと、預貯金に預け放しの個人や家計が大半である。
その横で、年金不安や長生きリスクが多くの人々の間で、ひんぱんに語られだしている。
そこで、「貯蓄から投資へ」が金融庁はじめ国を挙げて唱えられて数年がたった。
投資でもって、預貯金を超えた財産づくりを実現していこうということだ。
現に、NISAや積み立てNISAといった税優遇制度も整備されてきている。
ただしだ、「貯蓄から投資へ」のタイミングと方法とが、大きな禍根をもたらしかねないのだ。
世界的な金融緩和バブルに乗った株高や債券高という投資環境下で、投資をはじめようはあまりに危険である。
その上、40年余に及ぶ長期金利の低下傾向に沿って構築されてきた投資の手法が曲がり角に差し掛かっている。
すなわち、債券投資は安全だとか、インデクス運用で平均株価に沿った運用で良しとする考え方だ。
どういうことか? 世界的なインフレ圧力と金利上昇によって、世界の投資環境は急悪化しだしている。
おそらく、これから5年ほどは債券投資もインデックス運用も成績急悪化に見舞われよう。
もちろん、ゼロ金利でもなんとか利回りを稼ごうと設計された金融商品の大半が、ガタガタの成績に追いやられよう。
つみたてNISAも、一体どれだけの運用会社が20年を超えた期間で、しっかりした長期運用を全うできるのか?
金融緩和バブルに乗ってきただけの運用会社に、一体どれだけの準備と経験を持っているか、はなはだ疑問である。
世界の投資環境の激変に遭遇して、投資をはじめたばかりの若い人たちが辛い経験をしてくれないよう願うのみである。