20日の日銀黒田総裁による発言と、0.25%から0.5%へと介入幅を広げた発表に関し、メディアのコメントが面白い。
日銀もついに投機筋に追い込まれた、それで金利引き上げに踏み切らざるを得なくなったとか。
たしかに、海外の投機筋はずいぶん前から日本の国債の空売りを仕掛けてきている。
いずれ日本の金利も引き上げざるを得ない、そうなると日本の国債は価格下落に見舞われる。
それを先取りして、今のうちに日本国債を空売りしておき、大きく下げたところを買い戻せば利ザヤを稼げる。
そういった投機筋の狙い通りの展開となってきた。 それが、投機筋に追い込まれたの報道である。
この数日間の展開を観るにおいては、あたかも日銀が海外の投機筋に屈したようにも言えよう。
しかし、別に日銀と海外の投機筋とが四つに組んで、それほどの大勝負を展開してきたわけではない。
ずっと主張してきているように、日銀といえども経済合理性に抗えなくなってきただけのこと。
どういうことか? 世界的なインフレ圧力が高まってきて、各国は対抗措置を取らざるを得なくなった。
-それで、今年の3月頃から、米国や欧州中央銀行そして英国では利上げを加速させてきている。
その結果、金融緩和姿勢に固執している日本は、米国などと比べると金利差が3%以上に開いてしまった。
それだけ金利差が開けば、日本からマネーが米国などへ吸い寄せられるのは、ごく自然の現象である。
その流れで、円安が加速的に進み、一気に151円にまでいってしまった。
これはマズイと大慌てで強力な円買い介入を実施して、円ドルの為替レートを140円台にまで戻した。
その後、世界の金融マーケットでは、来年には利上げの幅が縮小するのではといった観測が出てきた。
楽観的な観測の広がりとともに、世界のマネーが米ドルへの集中を緩めだした。
それで、円ドルも130円台にまで、円高ドル安が進んでいたというところ。
つまり、為替レートは世界のマネーの動き次第で、どうにでも変動する。
それに対し、日本と米欧英との金利差は、ファンダメンタルズという側面でのギャップである。
ファンダメンタルズのギャップは、水が低きに流れ込んでいくように、止めようがない。
そう、日本からのマネー流出は、海外との金利差がなくなるまで続くことになる。
これは経済合理性の然らしめるところであって、日銀など人為の及ぶところではない。
そう、いかに剛腕といわれている黒田総裁でも経済合理性には逆らえず、利上げに動かざるを得なくなったわけだ。
投機筋はいつも価格などのギャップをついてくるが、それも経済合理性に従っての行動にすぎない。