世界はインフレ圧力の高まりに戦々恐々としているが、いまがピークで来年以降は収まっていく。
そういった見方が多いようだ。 それよりも、景気の減速懸念の方が気にかかるといったところか。
本当に、インフレ傾向は来年あたりから収まっていくだろうか?
そして、景気の落ち込みを最小限にとどめることになるのか? ちょっと甘い、そう考える。
みな口々に、40数年ぶりのインフレといっているが、さてどこまで実体験を伴ってのものか?
以前から書いているように、いま進行中のインフレ圧力は、案外と根が深い。
エネルギー価格の上昇傾向は、ロシア軍のウクライナ侵攻よりも前からはじまっていた。
地球温暖化を止め、異常気候による災害を阻止しようと、脱化石燃料への動きが世界的に高まっていた。
年金など機関投資家も、ESGやSDGsの旗を掲げて石油関連企業への投資を減らしてきた。
そういった世の流れに抵抗し得ず、石油関連企業はどこも新規開発投資を抑えてきた。
ところが、世界人口の増加もあって、エネルギー需要は着実に伸びている。
再生可能エネルギーなどの供給力が、よほど高くなってこない限り、石油や天然ガスの価格は強含んだままとなる。
これは、ちょっとやそっとでは収まらない、コストプッシュ型のインフレ圧力である。
そこへ、ウクライナ問題のみならず、米中の貿易戦争など地政学的なリスクの高まりが、供給ネックとなってきている。
また、米国第1主義などによる経済グローバル化の逆行現象が、世界的に供給コストを高めている。
これらも、構造的なコストプッシュ型のインフレ圧力となってきている。
そう考えると、このインフレ傾向はそう簡単に収まりそうにないのでは。
となると、金利上昇もまだまだ続き、世界の金利水準もいまよりずっと高い水準で推移しよう。
それは、金融緩和バブルを崩壊させるだけでなく、ゼロ金利に甘えてきた企業群の脱落を促進させる。
その過程で、金融マーケットでは投資損や不良債権の嵐が噴きまくり、景気は落ち込み失業率も高まろう。
どれもこれも、現時点からみるに大変な混乱ということになる。
しかし、実体経済をベースとして事態を眺めるに、そう大騒ぎすることでもない。
バブル膨れしていた金融資産が吹っ飛び、ゾンビ企業が淘汰されて、より健全な企業へと労働力は移動していく。
つまり、より健全な経済への移行が進むことになる。 インフレも、経済活動の中で吸収していくだけのこと。
大荒れは免れないが、台風一過の晴天を楽しみにしよう。