機関投資家、悩ましいだろうね

Browse By

昔、ピクテで機関投資家の資金をずいぶん多く運用していた。 あの頃を思い出す。

マーケットが荒れてくると、どんな状況だ、見通しはどうだと、投資家顧客からの質問がひっきりなしで押し寄せてくる。

生保とか信託銀行、そして特金(特別金銭信託)という勘定で運用している企業などの窓口担当者はもう必死である。

なにしろ、彼らは組織の上の方へ運用状況悪化の要因を説明したり、どう立て直すかで納得を求めなければならない。

窓口担当者たちは、上昇相場が続いている間は、もっと強気で買って成績を押し上げろと、うるさく迫る。

それでいて、いざ反転暴落相場ともなるや、なんで暴落を予知できなかったのかとかの叱責を浴びせてくる。

もちろん、窓口担当者たちも人の子である。 組織の上からの指示と圧力で、そうせざるを得ない。

そんな流れで、機関投資家の資金を預かる運用担当者たちは、いついかなる時でも良い成績を上げるべく追いまくられる。

これは、きつい。 運用者は独自の判断で上昇相場を途中下車できないのだから。

下手に、自分の判断で売り上がっていって、その後もさらに上昇が続くと、まだ売っていない競争相手に成績差をつけられる。

すると、資金を預けている機関投資家顧客の窓口担当者からは、なんで早売りしたんだと叱責が飛んでくる。

ひとつ間違えると、預かり資金を引き揚げられたり、運用契約を解除される。

それは困る。 結果として、上昇相場を最後の最後まで踊り続けることになって、暴落相場に遭遇してしまう。

なんともお粗末な展開だが、これが世界の運用現場の姿である。

1980年代以降、世界の機関投資家運用がマーケティングのビジネスに、どんどん変容していった。

年金はじめ機関投資家の資金を預かり運用するためにはと、目先の成績を追い求めては暴落相場のガラを食らう、ド下手な運用が定着してしまった。

いま、まさに世界の機関投資家やその運用者たちは、この先どうしようで会議会議の連続だろう。

カネ余りバブルに乗って、買って買いまくってきた。 ところが、異常なまでに上昇してきた株式市場、明らかに変調をきたしている。

さあ、どうするか? われわれ本格派の長期投資家はずっと前から、バブルとは一線を画している。

それに対し、世界のほとんどの運用者たちはこの変調にさえも、踏ん切りをつけられない。

さっさと売ってしまえば、暴落相場に遭遇しなくて済む。 されど、まだまだ暴落相場には至っていない。

この段階で、自分から売っていく見切り発車は、とてもできない。 でも、どうみても変調の度合いは強まるばかり。

さあ、どうするか? その会議会議で、世界の機関投資家や運用者は、さぞや忙しいことだろう。