米国やEUでの金利上昇を受けて、世界の債券市場は崩れを見せ始めている。
債券は金利裁定商品の典型で、金利が上がれば債券価格は、それに反比例して下げる。
どいうことか? 金利が上がってくれば、どの投資家もいま保有している債券の(低)利回りでは満足できなくなる。
そして、より利回りの高い債券に乗り替えようとする。 つまり、保有している債券を売りに出すわけだ。
売られた債券は値を下げる。 つまり、最近の金利水準の利回りと同程度になる価格まで値を下げる。
これが、金利裁定の動きだ。 金利が上昇に転じると、すべての債券が例外なしに売られる。
いま、世界を覆ってきているコストプッシュ型のインフレは、収束の気配が見られない。
それは多くの国民の生活を大きく圧迫する。 少しでもインフレの勢いを削ぐためには、金利を上げていかざるをえない。
現に米FRBは政策金利を2度も引き上げた。 年内に、もう3回ほどの利上げが見込まれている。
ヨーロッパ中央銀行も利上げと金融引き締めの準備に入っていて、マイナス金利国債が急速に姿を消してきている。
一人、日銀だけが金融緩和政策に固執しているが、そういつまでも世界のインフレ動向に逆らってはおれまい。
世界的なインフレ圧力を緩和させようとして、金利が上がっていけば、それに反比例して債券の価格は下落していく。
すなわち、世界の債券市場はこれから大きく崩れていくことになる。
そこからだ、別の問題が世界の債券市場に重くのしかかってくるのは。
米国でいうと、長期金利は1983年からずっと低下基調をたどってきた。
つまり、債券市場はこの38年間ずっと上昇トレンドを追ってきたわけだ。
それどころか、リーマンショックやコロナ問題などで、年を追うごとに金融緩和の規模が大きくなっていっている。
先進国中心に金利も下がり続け、ゼロ金利やマイナス金利の世界に入ってきていた。
ということは、世界の債券市場はずっと未曽有の新規債券の発行ラッシュに沸いてきたわけだ。
その結果、天文学的な金額の債券発行残高となってきているわけだが、その重みがこれから表面化してくるのだ。
どれもこれも超のつくほど低利回りの債券だ、世界的な金利上昇は強烈なボデーブローとして効いてくる。
もう時間の問題で、世界の債券市場は売り地獄の修羅場に堕ちていこう。
われわれ長期投資家は、ずっと前からバブル相場とは一線を画してきた。 当然のことながら、債券の保有はない。
したがって、世界の債券市場の大崩れは高みの見物となる。
紙切れ同然となった債券のバーゲンハンティングは、ずっと先だ。 その時は、発行体の信用度を徹底的に精査してからとなるが。