そもそも一国の通貨が高くなることは、経済力や国力を反映してのものであって、大いに歓迎すべき現象である。
逆に、通貨が下落トレンドを追うことは、その国の力が落ちている証左であって、なんとしても阻止せねばならない。
ところが、日銀は金利上昇トレンドを抑え込むべく、国債の無制限購入に走っている。
これこれの金利水準からの国債売りは、日銀が無制限に買い取るぞとする政策姿勢を打ち出しているのだ。
具体的には、10年物国債を0.25%の利回りで、原則として売り物はすべて買い取る「指し値オペ」の実施である。
それに対し、米FRBはインフレ抑制で利上げに入っている。 第1弾が、0.25%の政策金利の引き上げだった。
次回の第2弾では、0.5%幅の金利引き上げも予測されている。 年内には、あと5回ほどの利上げもあるという。
米国の金利水準が上がっていけばいくほど、日米の金利差から円売り圧力は高まっていく。
それは、ごく自然の経済現象である。 現に、今日は1ドル123円台の円安となってきている。
さてさて、この現象を傍観していていいものだろうか? 日銀は、なにがなんでも金利を抑え込んでいこうとしている。
株式市場では、先週も書いたように、やみくもな円安イコール株高の考え方で、歓迎の買いを集めている。
どちらに対しても、「おいおい大丈夫かよ」と危険信号を発したくなってしまう。
世界で台頭してきているインフレ傾向だが、一般的な想定以上に根の深いトレンドと思われる。
なにしろ、エネルギー、食糧や資源そして賃金などの分野で、コストプッシュ型のインフレが進行中なのだから。
それらコストプッシュ型のインフレに対しては、円高が日本にとって唯一ともいえる有効な対策である。
先進国でも群を抜いて、エネルギーはじめ資源や食糧などの輸入依存度が高い日本だ。
輸入インフレ圧力はこれからどんどん高まっていく。 それに対し、円高は最大の防御手段となる。
なのに、日本全体が相も変わらず円安歓迎の思考パターンに凝り固まっているのだ。
それも、通貨の番人たる日銀が先頭を切って通貨安の政策を推し進めているのは理解に苦しむ。
ここまでもゼロ金利にこだわり、日銀の財務規模を日本の国内総生産(GDP)の1.3倍にまで膨れ上げさせてきた。
この先、一体、どこまで行ってしまうのだろうか? 日銀の暴走というと、言い過ぎだろうか?
まあ、われわれ長期投資家はとんでもないインフレと金利上昇を想定して、それらを乗り越えるよう対策を講じておこう。