長いこと運用ビジネスに携わってきて、ずっと苛立ってきたのが業者の販売姿勢である。
販売というビジネスを展開する以上は、手数料などの収入を増やすことが狙いとなる。
それには、どうしても売りやすい投資商品に流れてしまう。
売りやすい投資商品となると、今の相場に乗ろうとしたり、投資家人気が高まっているものに集中しがちとなる。
それらは往々にして、その時がピークだったということになりかねない。
投資家からすると、高値掴みさせられることになり、投資収益を得るどころか損失を抱える羽目になってしまう。
この矛盾は、昔からのものであり、投資運用ビジネスにおける構造的な問題ともいえる。
逆から考えてみよう。 この投資商品は、10年20年先の資産最大化を目指した運用をしますなどといっても、一体どれだけの投資家が買ってくれるだろうか?
5年先でさえも不確かなのに、10年とか20年とかの投資リターンを、一体どうやって期待したらよいのか。
そう考えてくると、投資家の方も今イメージできる儲け話の方が、まだ手を出しやすい。
かくして、販売サイドも投資家の方も、いま人気となっている、あるいは話題となっている投資の方向に走りたくなってしまう。
これは、投資運用ビジネスにおける、一番やっかいで、なかなか解決できない根っ子の問題である。
いくら投資教育とか金融リテラシーとかを唱えたところで、「1年とか2年先は判るが、10年はね」と言われたら、もうそこで短期投資となってしまう。
誰も、10年とか20年の投資の話なんて聞こうともしない。 そんな商品には、見向きもしない。
ひとつだけ、昔から確立されてきた方法がある。 それは、10年とか20年できれば30年以上の実績を地道に訴えることだ。
その訴えを聞いてくれる投資家のみが、本当の顧客である。 そう断じていい。
そんな10年とか20年の投資話など聞きたくもないという人たちは、どっちみち縁のない顧客層と割り切っていい。
ここのところは、長期投資というものを啓蒙していく上で、避けては通れない問題であり、覚悟でもある。