投資の教科書でも、機関投資家の運用でも、異口同音で株式投資はリスク資産であるという。　教科書や運用のプロ達が口をそろえて、株式投資はリスクが多いというのだから、そうなんだろうと誰も疑わない。　果たして、そう信じていいものだろうか？

　専門家がいうことを鵜呑みにせず、本当に株式投資はリスクが多いのか、今日はじっくり考えてみよう。　最初に整理しておきたいのは、どんな時間軸で株式投資のリスクを判断するかだ。

　毎年の成績を追いかけさせられる機関投資家の間では、きちんと利回り計算が立つ債券運用は安全資産とみなされる。　一方、株式投資は価格変動リスクが大きいから毎年の運用成績の目処など立たないし、運用年度の終盤にさしかかって暴落相場にでも見舞われたら、目も当てられない。　それで、株式投資はリスク資産というわけだ。

　年金も本来は１０年はおろか２０年３０年の長期投資で運用蓄積を最大化させようとするもの。　ところが、この３０年ほどは　”年金は大事な資金だから、毎年の運用状況や成績をチェックしなければならない”　が金科玉条になって、毎年の成績を追いかける資金運用が主流となってしまった。　毎年の成績を追いかけるとなると、よほどの長期上昇相場が続いていないと、株式投資などやっておれない。

　それよりも、債券投資で安定的に利回りを確保していこうとなる。　あるいは、短期の収益を追いかけるようなヘッジファンドや証券化商品にウエイトを置いた方が、よほど計算が立つということになる。　機関投資家の多くが年金資産の運用を最大のビジネスターゲットとしているから、世の流れは　”債券は安全、株式はリスクが多い”　が常識となってきたというわけだ。

　一方、長期スタンスでしっかり財産づくりをしていこうとしている一般生活者にとっては、１年毎の成績など何の価値もない。　それよりも、大きな社会や経済の変動に直面しても財産を保全しつつ、しっかり自分年金を築いていくことが絶対的な願いである。

　いま世界中とりわけ先進国では、史上空前といわれるほどの金融緩和と大量の資金供給に走っている。　金融不安を起こさせないため、景気を浮揚させるためということだが、ジャブジャブにばら撒かれた資金はいつかは暴れだす。　また、世界的な国債バブルといった状況も、そういつまでも続くはずがない。　ここから５年もしないうちに、長期金利の上昇や国債価格の値崩れが現実となろう。

　いざそうなったら、債券相場は売り一色となる。　機関投資家の間でも年金運用の現場でも、安全と信じて疑わなかった債券価格の急落に直面して大混乱に陥ろう。　およそ３０年ぶりの長期金利の上昇と債券相場の暴落で、多くの運用者は経験したことのない事態に右往左往することになる。　国債を大量に保有している金融機関も巨額の評価損を抱え込むことになる。

　マスコミはじめ世を挙げての大騒ぎとなろうが、それは長期金利の上昇と国債の値崩れで困る人達の問題にすぎない。　たとえ銀行などが潰れても、人々の生活はなくなりっこない。　われわれの毎日の生活を支える企業の生産や供給活動も、ずっと続くというか続けられるに決まっている。　当然のことながら、そこに焦点を当てた長期の株式投資が一挙に輝きを放つことになる。

　世の中、なにが起こるか知れたものではない。　いざ大変なことが起こっても、人々の生活はなくならない。　それは不変の真理であり、そこへ財産を置いておくことが最も安全なのだ。　いつどんな時でも頑張ってもらいと思う企業を応援する長期投資を淡々とすすめておくことほど、確かな財産づくりはないと思うが、皆さんいかがですか？

　ブログへのコメントや質問への回答は、毎月第２第４水曜日２０時より配信される生放送番組、「インベスターズTV水曜劇場」にてお答えしております。　当ブログでお答えすることはありませんので、ご注意ください。　インベスターズTV水曜劇場は　http://www.investors-tv.jp　でご覧になれます。

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