資産運用ビジネスで必ず出てくるのが、運用成績の実績や他社との比較である。
いわゆるパフォーマンス競争で、その優劣が運用資産獲得に大きく影響する。
マスコミも運用成績の比較でもってコメントするのが、一番説得力のある報道となる。
運用成績の比較となると、一定の期間を取り上げて、どこが優れているかの順位をつけたりする。
これらのどれもが、運用資産獲得の営業には決定的な影響力を及ぼす。
ところが、資産形成を目標とする個人からみた場合、しばしば大きな判断ミスを招く。
ちょうど、この15年間の運用実績や成績比較が、その典型例である。
どういうことか? リーマンショック後、ゼロ金利と空前の資金供給で世界の金融マーケットは大躍進した。
多くのファンドは株式市場や債券市場の急伸に乗って、素晴らしい成績を収めてきた。
そういった成績でもって、今後10年はおろか20年30年の資産形成を夢みるのは、きわめて危険である。
現に、壮大なカネ余り上昇相場だったが、インフレ台頭や金利上昇によって、いまや大崩れしかかっている。
金融マーケットが大崩れに入ると、これまでの成績など吹っ飛んでしまう。
ということは、資産形成の夢がズタズタになってしまいかねない。
その点、われわれ本格派の長期投資家のように、マーケットとはつかず離れずでマイペース運用しているのは強い。
ずっと以前から、カネ余り相場の熱狂からは遠く離れて、地道な長期投資に徹してきた。
つまり、この15年間のパフォーマンス競争などとは、一線を画してきたわけだ。
それが故に、これから起こりうる金融マーケットの大崩れにも、さしたる影響は食らわない。
むしろ、大きく下がった時には、バーゲンハンティングの絶好機と待ち構えている。
金融緩和バブルに乗って好成績を謳歌してきたところが右往左往するのとは、決定的な成績差となろう。
資産形成を願う個人投資家からすると、どちらの方がより安心してついていけるかは、論を待たないだろう。
これが、資産運用ビジネスの要諦であり、投資家顧客に対する責任というものである。
そう、その時々のパフォーマンス競争など、資金集めの営業のためのもの。
そんなものに踊らされるのではなく、資産運用会社の運用哲学とその実践度合いを、しっかりチェックすることだ。
それによって、本当に30年40年といった長期間で資産形成を期待できるところかどうかを判断しよう。