日本振興銀行が破綻申請で、初のペイオフ発動という報道が流れている。
経営不振に陥ったいきさつは他に譲るとして、
われわれが考えておいて良いのは日本に銀行が多すぎるという現実の方。
明治維新以来、
日本は国策として広く国民の資金を吸い上げては、
産業育成にまわす資金循環システムを築き上げてきた。
いわゆる、殖産興業と富国強兵政策であり、
戦後の傾斜生産方式を遂行していくベースとして、
国民の間に貯蓄信仰を高め個人や家計の余剰資金は、
すべて銀行や郵便局の窓口へ集まってくるように仕向けた。
生命保険も同じ流れにある。
これを間接金融というが、
日本経済の長期高度成長は、
まさしく間接金融を最高度に発揮させた賜物である。
これだけの経済大国にまで成長するのを、
ほとんど国内資金で賄った例は日本を置いてない。
その中核をなしたのが、
銀行や郵便局そして生命保険を通じて国民の資金を吸い上げては、
産業界に循環させる間接金融だった。
しかし、
一国の経済が発展段階を卒業して成熟段階に入っていくにしたがって、
間接金融の弊害が出てくる。
産業界に資本の蓄積が進み、もうかつてほど間接金融に頼る必要がない。
それなのに、銀行や郵便局そして生命保険に、
相変わらず国民の資金はドンドン集まってきてしまう。
もともと元本安全で確実な利殖商品として、
預貯金や生命保険を位置づけてきたから、
安定度の高い大企業中心の企業融資の需要が、
もうかつてほど高くないとなれば、銀行や生保は融資先に窮する。
お金の行き場がないからといっては、
野放図な国債購入や海外へ向ける比率を急速に高めている。
その一方で、
成熟経済で重要な役割を発揮する株式投資などリスク資金の供給体制となると、
日本においては悲しくなるほどお粗末である。
中小企業などへの銀行融資がどんどん比率を下げているのに、
それに代わって個人の投資でリスク資金を供給する体制が育っていない。
結果として、
日本経済の80%強をなす中小企業が恐ろしい勢いで潰れていっているし、
失業も急増しているわけだ。
だからといって、預貯金が安全とは言い切れない。
ちなみに、ペイオフと気楽にいうが、
それを保証する預金保険機構の積立準備額が、
どのくらいか知っているのだろうか。
要するに、日本は預貯金に個人資金が集まりすぎで、
株式投資を含めリスク投資が少なすぎるのだ。
やるときは断固としてやるというが、
そう言うばかりでさっぱり実行が伴わない。
それも、円売り介入をするだけだろうと、マーケットに読まれている。