米国の3大格付け会社のひとつ、フィッチが米国債の格付けを一段階下げた。
その報道で、債券市場はもちろん世界の株式市場にも大きな衝撃を与えている。
この6月に、米国の債務上限問題が議会の承認を得て、ギリギリのタイミングで回避された。
とはいえ、それ以降も米国の財政が健全化に向かっているわけではない。
むしろ、財政悪化傾向は続いていて、いずれ次の債務上限問題がやってくるだけのこと。
そんな背景もあって、世界で最も信用度が高いといわれる米国債だが、格付けの引き下げとなったわけだ。
こういった格付け機関によるレイティングも、マーケットでの価格形成も、健全なる経済活動には不可欠である。
そこで発するシグナルが、しばしば経済的な不合理を是正させる働きをしてくれる。
まさに、炭鉱のカナリアが危険信号を発する重要な役割を果たすように。
ところが、この10年余り先進国中心に人為的な価格抑えつけが横行してきた。
ゼロ金利政策やマイナス金利、それに加えてこれでもかこれでもかの金融緩和政策の深掘りだ。
日本では、1995年の9月から超低金利政策を実施し、そのままゼロ金利へと移行している。
人為的な金利抑え込み政策は、そのまま国債価格の下支えとなり、野放図な国債発行を許してしまう。
その結果、財政悪化にブレーキがかからず、より不健全な国家財政を助長することになる。
為政者からすると、株価や債券価格の下落や景気後退を防ぐには、なんでもやるということだろう。
しかし、経済合理性を無視した金融緩和政策のゴリ押しは、そういつまでも続けられない。
世界的なインフレ圧力の台頭と、それを抑えようとする金利上昇は、まさに経済合理性からの刃である。
今回の米国債の格付け低下も、炭鉱のカナリアと同じく危険信号の発信と受け取りたい。
つまり、債券市場や株式市場の動揺はあって当たり前だし、健全なる経済に向かって避けて通れない道である。
どうせ、経済的な不合理が是正されるのなら、早ければ早い方がいい。