法隆寺でのオペラ公演などで出張が続いたが、ようやく落ち着いて席に座って長期投資家日記を書ける。
この2週間というもの、日本株市場は大きく上昇し、バブル崩壊以来30年ぶりの株高に沸いている。
海外勢と比べ、出遅れ気味の日本の投資家はバスに乗り遅れるなと、大慌てで買い姿勢を強める有様。
メディアや市場関係者は株高大歓迎で、さらなる買い材料を次から次へと見つけ出してくれる。
まさに、上昇相場時特有の「それ行け、どんどん」の熱気が、市場にあふれている感ありだ。
さて、この突然の上昇相場だが、われわれ本格派の長期投資家からすると、絶好の売り場と映る。
もともと、ずっと前から金あまりバブル株高に対しては、遠く離れる運用姿勢を貫いてきた。
したがって、ここへきての株高といっても、そう売りたい保有株は残っていない。
それでも、せっかっくの高値だから、売れるものは売って現金化を進めておきたい。
なぜなら、この先もういつどこで大きな下げが発生しても、おかしくはないからだ。
世界的なインフレ圧力と金利上昇は続いている。 とりわけ、賃上げ要求は世界中で広がっている。
それらの影響が経済活動全般に及んでくるのは、まさにこれからである。
欧米などでは、金利上昇などコスト上昇が企業経営を圧迫しだしている。
また、世界の債券投資家は既に大きな評価損を抱えていて、さらなる金利上昇には戦々恐々である。
ジャンク債など信用力の低い債券が、ゼロ金利を良しとして大量発行されてきた。
それらの借り換え時期が次々と到来するが、これだけ金利が上がってきているのだ。
もともと収益力の低い企業などは、より高い利回りでの借換債の発行ができないと、資金繰りに窮することに。
あるいは、既発債においても発行体企業がインフレや金利上昇といったコスト上昇で経営難に陥ることもあり得る。
どこかでデフォルト(債務不履行)が発生するや、あちこちのジャンク債などへの連鎖は避けようがない。
これらのどれもが、もういつ発生してもおかしくない。 その瞬間から、カネ余り金融相場は大崩れに入っていく。
なにしろ、金融の時代だとかで、実体経済から大きくかけ離れて膨れ上がってきた張りぼて経済だ。
それが、インフレと金利上昇という実体経済からの刃によって、張りぼての空気が抜け出しつつあるのだ。
もういつどこで、株高債券高のバブルが弾けてもおかしくないと考えておこう。
その時は、金融マーケット全般で、きつい下げは覚悟しておこう。
もちろん、われわれ本格派の長期投資家にとっては、待ってましたの出番である。