米国では、MMFへの資金流入が2週連続して過去最高額を更新しているとのこと。
先週で、MMFの残高は5兆3300億ドルとなった。 日本円にして、714兆円ほどだ。
マネー・マーケット・ファンド(MMF)は、短期国債などに投資するファンドをいう。
米国の政策金利が5%にまで引き上げられてきたから、短期債市場は5%ぐらいの利回りとなっている。
その金利を求めて、米国の個人マネーは預金からMMFへのシフトが発生するのは、ごく自然の流れである。
ということは、銀行にとっては預金の流出が相次ぐ事態となるが、5%の金利には抗いようがない。
すでに、米銀は3行が破綻したが、その主因は金利上昇による保有債券の評価損と、預金の急速な流出である。
もうこれ以上の銀行破産はないと米政府や金融当局は、しきりに発言している。
しかし、利子の低い預金からMMFへの資金シフトは、経済合理性による現象で止めようがない。
預金流出で困る銀行は、保有債券などの評価損に対処して信用力を高め、預金金利を引き上げるしかない。
これも、経済合理性に沿った動きである。 どちらも、世界的なインフレ圧力と金利上昇によっての現象である。
そのインフレ圧力と金利上昇も、マネーの異常なる大量供給に対し、経済合理性の刃が突き刺さってきたもの。
供給が多くなれば価格が下がる。 つまり、マネーの価値が下がり、インフレと金利上昇を引き起こす。
経済では当たり前のことだが、金利上昇のしわ寄せが、世界中あちこちで燻ぶりだしているのだ。
ここまでは、米銀やクレディスイスの破綻ぐらいが表面化しただけだが、それだけでは済まないだろう。
米国の住宅や不動産関連のビジネスでも、金利上昇の影響は無視できない状況になりつつある。
空前の金融緩和に乗って大膨張してきたノンバンクも、世界中でビジネスを展開しているが、要警戒である。
各国の銀行規制などが及ばない、いわゆるノンバンクには銀行預金に匹敵する巨額の資金が集まっているとのこと。
それらノンバンクは、1年前までのゼロ金利をベースに、様々な金融ビジネス分野で拡大に次ぐ拡大をしてきた。
ところが、この1年間の金利上昇で、どんどん苦しい立場に追い込まれてきている。
おそらく、そう遠くない先でノンバンクの経営破綻といったニュースが流れだすのだろう。
これまた、世界的なインフレ圧力と金利上昇によって、マーケットが引き起こす淘汰現象である。
日本の金利だって、世界の金利水準に同調する動きに巻き込まれるのは、時間の問題である。
どれもこれも、経済合理性のしからしめるところで、どんな政府も従わざるを得ない。
来週は、奈良の法隆寺でのオペラ公演で、長期投資家日記はお休みとなります。
皆さん、来週の18日~21日、法隆寺でのオペラ「トロバトーレ」公演で、お会いしましょう。