歴史に例のない金融緩和が続いてきた。 その挙げ句、ゼロ金利やマイナス金利にまでいってしまった。
日本でいうと1990年代に入ってのバブル崩壊から、先進国中心に世界では2008年のリーマンショックからだ。
金利をゼロ同然にまで引き下げ、資金を大量に供給しさえすれば経済は成長する。
そういったマネタリズム理論に基づいて、それを日本や先進国では発展応用してきたわけだ。
ところが、70年代に生まれた、このマネタリズムの考え方が浸透していった結果は、惨憺たるものだった。
たしかに資金を大量にバラ撒いてきたから、世界の金融マーケットは天文学的な規模にまで発展拡大した。
一部の富裕層の金融所得は、これまた突出して増大していった。
その横で、大多数の国民の所得はさして伸びなかった。 その結果、所得格差が異常なまでに拡大した。
いってみれば、マネーの大量供給による張りぼての経済が、大きく膨れ上がってきただけのこと。
その張りぼて経済の膨れ上がりに対して、いよいよ実体経済から鋭い刃が突き刺さってきた。
それが、世界的なインフレ圧力の台頭と、それを抑制しようとする金利上昇である。
このふたつは、経済合理性が差し向けた刃ともいえるもので、人為では到底逆らえない。
ということは、金融緩和でやってきたネジの逆戻しが、これから始まるわけだ。
一例を挙げると、世界の金融機関は保有債券で1000兆円を超える評価損を抱えていると報道されている。
昨年からの米国やEUでの金利引き上げで、債券価格が下落した結果だ。
もちろん、債券だから満期まで保有して償還を受ければ、元本はきっちりと戻ってくる。
したがって、評価損が大きく膨れ上がっているからといって、そう慌てることはない。
しかしだ、どこかで資金需要が発生して、保有債券を売却しようとした瞬間に大きな実現損が発生する。
そう、ここからいろいろ問題が噴き出てくると考え、その覚悟をしておこう。
どういうことか? 世界的なインフレ圧力と金利上昇は、そう簡単には収まりそうにない。
ここまでの金利上昇でも、世界の企業経営を相当に圧迫しだしている。
どこで、お手上げとなるか知れたものではない。 それが、金融機関の債券売りにつながりかねない。
あるいは、その企業が発行してきた債券のデフォルト(債務不履行)を招いたりもする。
このような、ネジの逆戻しが、これから連発することになろう。
ここまで膨れ上がった張りぼての金融や経済だ、相当に大きな逆戻しは覚悟しておこう。