相次ぐ米銀の経営破綻に対しては、米国の中央銀行に当たるFRBが預金の全額保護を決めた。
そして、経営危機の陥ったスイスの大手銀行クレディスイスには、最大手のUBSが吸収合併することになった。
それで金融危機は収まったとの観測が出てきて、米国も日本も株式市場は湧き上がっている。
株式市場らしい楽観的観測の背景には、米国の利上げにブレーキがかかる。
あるいは、利下げも期待できるといった希望的な読みさえ出てきている。
だが、まったくをもって甘い、そういうしかない。 金融危機とかは、これからが本番なのだから。
そもそもが、この12年間というもの金融緩和とゼロ金利でもって、世界の債務残高は異常に膨れ上がってきた。
国際金融協会(IFF)によると、国や家計そして企業や金融機関の債務を合計すると、世界のGDPの3.5倍に達しているという。
すさまじく巨額に膨れ上がった債務残高だが、世界的なインフレ圧力と金利上昇によって重荷となってきているのだ。
住宅ローンでみると、分かりすい。 米国では政策金利がこの1年間で、4.5%も引き上げられた。
すると、変動金利の住宅ローンを組んでいた人達は、毎月のローン支払い負担が急増することになる。
まだ大きな社会問題とはなっていないが、住宅ローン破産がこれからどんどん出てきてもおかしくない。
もちろん、企業経営にも金利上昇の圧力がかかってきており、資金繰りに窮する企業が続出するのも時間の問題だろう。
当然のことながら、ジャンク債など信用力の低い発行体による債券は、いつデフォルトが発生してもおかしくない。
景気や企業収益の先行きも厳しくなっていくだろうから、株式市場が楽観に沸く理由はどこにもない。
だからといって、利上げの停止や利下げで事態が収束するわけではない。
問題の本質は、世界でみると12年間、日本でいえば30年間の金融緩和とゼロ金利で張りぼてとなった経済にある。
金融緩和とゼロ金利でまわしてきた世界経済だが、インフレと金利上昇という経済合理性の刃が突き刺さってきた。
張りぼての経済は、中身のなさをさらけ出すのを余儀なくされる。 それが、金融危機などに発展していくわけだ。
日本はもちろんのこと、世界中が大混乱に陥るのは避けようがないだろう。
だからといって、人々の生活とそれを支える企業活動は、ずっと続く。
つまり、実体経済はたとえインフレや金利上昇に襲われようとも、したたかに日々織りなされていく。
われわれ本格派の長期投資家にとっても、なんら怖れることなく堂々と乗り切っていくだけのことだ。