米国の地銀が相次いで経営破綻に追い込まれ、米FRBが即座に預金保護を確約した。
その横で、スイス中央銀行は大手銀行クレディスイスの救済に7兆円強の緊急融資枠を決めた。
どちらも金融不安の連鎖的な広がりを未然に防ごうとする緊急措置である。
ことの発端は、米国ならびにEUでの政策金利の相次ぐ引き上げを受けて、市場の淘汰機能が働き始めたところにある。
市場の淘汰機能? そう、先ずは株価など市場価格の下落によって、サインが出される。
きな臭いうわさが流れ出ている企業や銀行からは、株式市場で静かに売りが出てきだす。
そのうち、きな臭さの実態が少しずつ漏れ聞こえはじめる。 それが、さらなる株価下落を誘う。
今回の米銀でいえば、保有している債券が金利上昇によって評価損が膨らんできた。
それを警戒して、預金している企業や個人が資金の引き出しをはじめた。 株価も急落に入っている。
そのまま放置していると、取り付け騒ぎに発展しかねない。 また、他の銀行においても疑心暗鬼が走りだす。
ひとつ間違えると金融不安が一気に広がってしまう。 それはマズイと、米FRBが預金保護に動いたわけだ。
クレディスイスの場合は、以前から金融商品のトレーディングで大きな損失を計上したりで、経営不安がささやかれていた。
株価もズルズルと下がり続けていたところで、最大の株主が資本の追加投入はしないと発言した。
それで、一気にクレディスイスの先行きが不安視され、スイス中央銀行の緊急融資と相成ったわけだ。
このように市場の淘汰機能は、リスクを感じ取った資金が逃げ出しているといった情報発信からはじまる。
その情報を受けて株価などが急落することで、企業や銀行の経営を破綻に追い込んだりとなる。
そういった市場の淘汰機能が、いよいよ大暴れする展開となってきたようだ。
ここへきて、インフレ抑止の金利引き上げが効いてきて、金融マーケットや企業経営を揺さぶり始めている。
ひとつ間違えると、金融危機にも発展しかねないといった声も高まってきた。
さりとて、ここで金利を引き下げたりすれば、インフレの火を煽るだけのこと。 さあ、どうするか?
はっきりしているのは、先進国中心の異常なる金融緩和政策が行き着くところまで行ってしまったということだ。
そこで降って湧いてきたのが、インフレ台頭であり、インフレを抑止しようとの金利上昇である。
野放図にカネ膨れした企業や金融機関の戦線縮小と淘汰は、どうみても避けようがないと思われる。