成熟経済を支えるのは長期投資なんだよ

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 国民のほとんどがある程度の生活水準を達成してしまうと、その国の成長率は急激に落ちてくる。 そこまでの経済発展拡大期は、国民が物質的な豊かさを求めて耐久消費財などの購入意欲を爆発させるから、一国の経済は成長に次ぐ成長を遂げる。

 ところが、各家庭に家電など耐久消費財が行き渡ると、そこから先は買い替え需要が主体となる。 毎日の消費財需要は相変わらずの高水準でも、家電や車など耐久財の買い替え需要は数年あるいは10年に一度ぐらいとなってしまう。

 すると、どうしても経済規模は縮小トレンドとなっていく。 当然のことながら、給料の伸びも鈍るし失業率も高まってくる。 それが成熟経済の宿命でもある。

 日本経済がバブル崩壊後20数年にわたって低成長というかジリ貧に喘いでいるのも、まさに成熟経済化のしからしめるところである。 そこへ、主としてゾンビ企業の救済と存命に400兆円近い景気対策予算を投入したから、国の借金は急増の一途となった。

 いまアベノミクスで成長戦略に躍起となっているが、なかなか効果は出てこない。 理由は簡単で、国主導の成長戦略なんていつも絵に描いた餅でしかない。 経済を拡大発展させるのは、企業の成長投資と一般生活者の消費拡大によるところ大であるのに、そちらへの政策配慮が足らなすぎるからだ。

 具体的にいうと、徹底的な規制緩和で民間が自由に事業拡大意欲を爆発させられるようにしてやる。 そして、自分の意思と意欲でリスクを取って事業拡大した経済主体には、大幅減税でもって報いてやることだ。

 それだけのことで、民間の事業意欲と民間の資金でもって成長エネルギーを爆発させるから、国の予算などに頼ることなく経済活動は活発化していく。

 ところが、これをやると政や官の利権や既得権が削がれるから、政治家や官僚が重い腰を上げようとしない。 彼らが予算ばら撒きでゾンビ企業や金融機関の救済に走ったのも、まったく同じ線上にある。

 しかし、われわれ生活者にとっては、そんな政や官の無為無責任などたまったものではない。 とはいえ、そういった政治家を選んでいるのは国民だから、もうどうにもならない。

 もうひとつ、成熟経済を成長発展させる方法がある。 それが、長期投資である。 恒常的な財政赤字と1039兆円に上る借金で、国の財政は危機的な状況にあるが、809兆円の預貯金マネーの存在は大きな救いとなる。

 国の予算ばら撒きはもうやめてもらって結構だから、その代わりに個人の長期投資を高めるのだ。 809兆円の5%、すなわち40兆円が企業の応援投資に向かうだけでも、すごいことになる。 株式市場の活性化を通して、日本経済は元気一杯となるのが目に見えるようだ。

 預貯金から長期投資に向かう個人マネーも、配当収入だけで1.72%(東証一部企業の予想配当利回り)と預貯金利子0.02%の80数倍である。 そこへ、株式市場活性化と経済成長率上昇が、株価上昇期待をどんどん高めてくれるのだよ。

 成熟経済では個人の長期投資が大きな柱となっていくのが、欧米先進国では常識となっている。 ただ、あちらでは一部の中高所得層しか長期投資の恩恵に浴していないから、経済政策全般を引っ張るまでには至っていない。

 ところが、日本では一般個人が809兆円と、国内総生産 (GDP) の1.7倍もの預貯金マネーを抱えている。 その5%が動くだけで、欧米先進国がなしえていない成熟経済の成長モデルを世界に示すことができるのだ。

 高齢者層が預貯金マネーの60%強を保有している? 違う、あれこれ抜きで動くべきは現役層だ。 どうせ年金は当てにならないし、預貯金では財産づくりにもならない。

 現役層が預貯金の10%を長期投資にまわすだけでも、35兆円という巨額マネーが日本経済を活性化させることになる。 それが、給料の増加と財産づくりにつながっていくのだから、万々歳だろう。