8月に米国の国債が核付けを引き下げられた。 最近はヨーロッパ各国の国債格付けが相次いで引き下げられている。 それでも、世界のマネーがリスク回避の観点から国債への逃避を優先しているので、国債価格の値崩れには至っていない。
しかし、最も信用度が高いとされる国債の格付けが下がると、企業の社債発行にもそれなりに影響は及ぶ。 世界の誰もが認める超優良企業は別として、多くの企業の社債発行条件は国債よりも下に位置づけられる。 となれば、新規社債の発行金利は間違いなく上がる。
これはという企業の社債金利が徐々にでも上がっていくとなれば、そのうち投資家は相変わらず低利回りの国債を保有し続けるのが良いのか、より利回りの高い社債に乗り換えた方が賢いのか判断を迫られるようになる。
より利回りの高い社債へ乗り換えの動きが高まってくるにつれ、投資家は手持ちの国債を売ることになる。 一部にでも、この動きが出てくると、他の投資家も雪崩を打つようにして乗り換えに走ることになる。 それはそのまま国債価格の値崩れ連鎖をもたらして、市場金利は急上昇局面を迎える。
そういった事態は遅かれ早かれ発生するだろう。 それで国債が値崩れしようと長期金利が上昇しようと、われわれ長期投資家が慌てることはなにもない。 一方、デフレは続き長期金利は上昇するはずがない、あるいは質への逃避といっては、国債投資にしゃかりきとなってきた銀行など金融機関や年金有用者はパニック状態に陥るだろう。
なにしろ、債券相場はいつも一方通行的な展開となるから、売りが売りを呼ぶ修羅場も覚悟しておいた方がいい。 30年越しの債券上昇相場が続いただけに、債券の下げ局面を経験している投資家も少なく、一度グラッと来ると相当な混乱もあり得る。
たとえ、そのような事態に遭遇したところで、異常な超低金利がちょっと荒っぽく是正されるだけのこと。 また、大量に発行してきた国債が供給過剰で値崩れするのも、マーケットが経済合理性を求めてのこと。 なんら不思議ではない。
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