昨年の夏ごろから台頭しだしたインフレも、今年3月からの金利引き上げも、来るべくして来たものだ。
来るべくして? そう、2008年9月のリーマンショックよりはるか以前から、インフレ到来を訴えてきた。
執筆した書籍などで、長いことオオカミ少年を演じてきたが、ようやく本物のオオカミ登場となってきたわけだ。
オオカミとはいうものの、人為の行き過ぎに対し、経済合理性という審判が降るというだけのこと。
そもそもの論拠は、マネーの過剰なバラマキである。 マネーを大量供給すれば、お金の価値は下がる。
お金の価値が下がれば、モノの値段は上がる。 そんなこと、経済では当然のことである。
2001年9月の同時多発テロ以来、世界はマネーの大量供給に歯止めがかからなくなってしまった。
それをみるに、インフレ到来は必至と訴えてきたわけだ。 かれこれ20年になる。
ところが、その間に世界経済のグローバル化が急激に進み、中国を筆頭に新興国が一気に台頭してきた。
世界の生産体系や市場の急速なグローバル化で、農産物をはじめ工業製品まで低価格化が進んだ。
その結果、マネーが大量にバラ撒かれ続けたにもかかわらず、世界経済の現場でインフレのイの字も出てこなかったわけだ。
そうはいうものの、世界経済のグローバル化といっても万能ではない。
新興国や途上国の多くが、期待したほど恩恵を受けなかったのも事実。
マネーの大量バラマキによって金融経済は大発展したが、世界の人々の富はさほど増殖していない。
むしろ、世界全体からみるに低所得化が進んだ。 新興国も中進国の罠に陥って、経済成長にブレーキがかかってしまった。
そこへ、コロナ禍や米国の自国第一主義などで、世界の生産供給体系が分断された。
それによる価格上昇のしわ寄せが世界あちこちに及んでいった。 それが、このインフレの発端である。
インフレは生活者、とりわけ低所得層を圧迫する。 実は、先進国でも大多数の国民の低所得化が進んでいた。
金融緩和政策によって一部の人々の金融所得は著増したが、経済は期待したほど成長せず多くの国民は取り残された。
そんな背景で、世界各地で生活防衛の賃上げ要求が高まり、さらなるコストプッシュインフレを招いている。
もともと、マネーの大量バラマキによって、お金の価値が下がっていた。 その象徴が、ゼロ金利である。
そこへ、ようやくインフレ到来と金利上昇という、経済合理性からみた是正圧力がかかってきたわけだ。
是正圧力? そう、金利をゼロにして資金を大量に供給すれば経済は成長するというマネー経済に対してだ。
そういったマネー万能主義にはとてもついていけない、実体経済の現場からの刃である。