日本人が守るべき生き方として、明治の初期から4つの教えを叩き込まれてきた。
すなわち、真面目に働き、必要なモノは買うが、ムダ遣いはしない。 そして、余ったお金は貯蓄にまわすだ。
明治の初め、新政府は深刻な資金不足に苦しんでおり、それを打開するために貯蓄奨励策を強力に推し進めた。
それが、郵便貯金制度の導入と全国津々浦々に郵便局の設置であり、並行して全国各地の有力者に銀行を設立させた。
国内の余ったお金は、あまねく郵便貯金や銀行預金として吸い上げ、その資金を経済建設に向かわせようとしたわけだ。
郵便貯金は財政投融資の原資として、ダムや鉄道の建設、港湾や道路の整備などで大活躍した。
銀行預金は企業への融資となって、運転資金や旺盛な設備投資を賄っていった。
国内の資金を1銭の無駄もなく、経済の現場にまわすべく、表記の4つの教えを国民に叩き込んだわけだ。
結果として、日本の経済建設は世界の驚異ともいえるスピードで進み、国民所得も増進していった。
また、「チリも積もれば山となる」で叩き込んだ貯蓄信仰は、国民の財産づくりを促進させた。
まったく同じ図式が、戦後の復興と世界第2位の経済大国へのし上がる道を強力に下支えした。
この4つの教えは、一国の経済が発展拡大している間は、最強ともいえる力を発揮する。
しかしながら、その国が急速な発展拡大の段階を卒業し、成熟経済の様相を示しだすと逆に大きなブレーキとなる。
すなわち、ムダ遣いはせず余ったお金は貯蓄しておくが、経済を縮小均衡させてしまうのだ。
いつの時代でも、国民が真面目に働き必要なモノは買っていくのは、経済の原点である。
ところが、成熟経済ともなってくると、耐久消費財中心に買い替え需要が主体となり、モノへの消費ががくーんと落ち込む。
個人消費つまり経済の現場にまわっていくお金の量が急減して、経済成長率は急減速してしまうのだ。
そして、ムダ遣いはしないの教えが効いて、貯蓄は積み上がる一途となる。
現に、この31年間に積み上がった国民の現・預金勘定は、590兆円にも上る。(日銀速報)
その資金が、かつてのように消費として経済の現場にまわっていたならば、それだけで日本経済は年3.6%の成長を続けられた計算となる。
日本のGDPは1500兆円を超え、いまだに世界第2位の経済規模を中国と競っていたはず。 残念至極である。
そうなのだ、日本人は一刻も早く、ムダ遣いではなく生活の質を高める方向で、意義のあるお金のつかい方を学ぶ必要がある。
それが、日本経済の新たなる拡大発展につながっていくのだ。