大手メガバンクが国債の引受け団から降りる方向との報道が日経新聞に載った。 マイナス金利突入で損失リスクが高まっている国債を、毎年の発行額の4%以上を引き受ける役目は返上したいという。
国は毎年の予算を賄うため、40兆円前後の新規国債を発行している。 それに償還分の借り替えも含めると、総額で110兆円以上の国債を発行している。
国債発行の消化に万全を期すため、大手の証券会社や大手銀行を特定して引受け団としている。 その一角が崩れようとしているわけだ。
引受け団から降りようとしている事情は、そのメガバンクだけのものではない。 他の銀行なども同様の問題意識をもっていよう。
ということは、これまで野放図に発行してきた国債だが、いよいよ黄色信号が点滅することになると考えるのが自然だろう。
マイナス金利がその引き金となったものの、そもそもからして国債発行は限界に近づいていた。 なのに3年前、黒田日銀総裁が登場して国債を年間80兆円ずつ買い取る方針を打ち出したことで、限界が先へ延ばされてきただけのこと。
日銀が国債を市場で片っ端から買ってくれるので、メガバンクなどは保有国債を売って新規国債の引受けに応じていた。 その新規引き受け役を降りるということは、今後の国債発行に少なからぬ影響を与えよう。
この先、マーケットがどう反応するか、他の銀行や大手証券もう追随するのか、状況は微妙になっていく。 このまま日銀が国債購入を続けたところで、あと1年ちょっとで想定している枠を使い果たす。 さあ、どうなっていくのか?
本来なら、国債の野放図な発行は金利上昇でブレーキをかけるという市場の調整機能が、ずっと前にも働いていたはず。 ところが、超低金利そしてゼロ金利政策で、市場機能を抑えつけてきた。
また、日本の金融機関が国の政策に従順であろうとする伝統もあって、国債の大量発行は続いてきた。 その従順なはずのメガバンクが、いよいよお手上げですと言い出したのだ。
目先の動きは別にして、大きな流れでみると国債の値崩れは刻々と近付いていると考えておこう。 日銀が強引に金利を低く抑えようとしても、損失リスクが高まっている国債を持ちたくない、むしろどこかで売却したいとする投資家判断が勝っていく展開となろう。
そうなると、国債の値崩れと長期金利の上昇は同時進行する。 よしんば、国や日銀が政策金利をゼロに抑えつけても、国債値崩れによる市場金利の上昇は止めようがない。
まあ、今後の展開に沿って長期投資家の対応を書いていくが、われわれは慌てることはない。 むしろ、大きな流れはどんどん長期投資に向かってくるから歓迎である。
★広告 さわかみグループが支援した映画「ザ・テノール」のDVD発売中! あの感動をぜひもう一度!! http://scpshop.jp/
★注意 上記の内容は澤上篤人個人の見解であり、さわかみ投信株式会社の考えおよび「さわかみファンド」の運用を説明しているものではありません。 個人の真意を尊重するため、原則、文章の修正はせずにブログを公開しております。