明治のころから日本人は、「まじめに働き、必要なモノは買うが、ムダ遣いはしないで、あまったお金は貯蓄しておく」の、4つを叩き込まれてきた。
この4つの生活信条は、東洋の1小国にすぎなかった日本を世界第2位の経済大国にまで押し上げる原動力となった。
勤勉は日本人の代名詞となったし、朝から晩まで働いて得た収入で家電製品などを次々と買い揃えていったことで、企業の設備投資を煽りまくった。
その上で、ムダ遣いはせず貯蓄に励んだから、預貯金はどんどん積み上がっていった。
積み上がった預貯金マネーは、これまた一銭の無駄もなく企業など産業界へと流れ込んでいった。
お金をフル回転させることで、日本経済の規模はどんどん大きくなっていった。 国民の所得も伸びる一途となった。
素晴らしい働きをした生活信条だが、日本経済が成熟化していくにつれて、マイナスの作用を及ぼし出したのだ。
日本人は相変わらずまじめに働いている。 しかし、2番目と3番目の生活信条が大ブレーキとなってきた。
欲しいモノは一通りそろって、買い替え需要が主体となってくるや、個人消費の総額は一気に落ち込みだした。
そこへ、昔からのムダ遣いはしないの生活信条が効いて、預貯金マネーだけが大きく膨れ上がっていった。
ところが、企業は設備過剰に苦しんでおり、資金需要は減退している。 日本全体の金利も下がっていく。
こうなってくると、個人消費は低水準となり、膨れ上がる一途の預貯金も、貸出し先がなくなる。
日本全体で、お金の回転に急ブレーキがかかってしまった。 これが、この30年間、日本経済がジリ貧に喘いでいる背景である。
この状態を打破するには、第3の信条である「ムダ遣いはしない」を改めるしかない。
すなわち、モノではない方向での個人消費を、なんとしてでも高めるのだ。 そういった政策が急務である。
国民が文化・芸術・教育・スポーツ・技術・寄附・NPO・ボランティアといった方向で、どんどんお金をつかうように仕向けるのだ。
そうすれば、モノではない方向で新しい産業が生まれてくる。 それが、成熟経済の活性化である。
ところが、国のやっているのは相も変わらず企業の投資に期待する政策ばかり。
その上で、働くな改革(?)で第1の生活信条さえも、ぶち壊そうとしている。 これでは、日本経済に活気が戻るはずがない。
国に頼っていてもらちが明かない。 われわれ民間が意識して、お金を有意義につかっていこう。