質の悪いインフレ到来か

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最近あちこちで、インフレを懸念する声が高まっている。 現に、食品などの値上げが相次いでいる。

原油価格の急騰に対し、国家備蓄を放出するなどのニュースも、インフレ懸念に輪をかけている。

要因は、いくつか挙げられる。 第1は、コロナ禍での世界的なサプライチェーンの分断だ。

エネルギーはじめ工業原材料など物資の供給網がズタズタになり、それが供給不足と価格高騰につながっている。

第2は、人の移動制限で新興国などの低賃金労働者が自国に留まり、働き手の供給不足で生産現場の稼働率が上がらないことだ。

あるいは、農作物などの収穫で活躍する季節労働者が足らず、思ったように収穫できないといった問題も多発している。

第3は、空前の金融緩和と大量の資金供給で、すさまじいカネあまりが続いていて、それが金融マーケットからあふれ出てきていることだ。

いわゆる投機マネーといったもので、儲かりそうなものには何でも買い群がる。 その価格押し上げ圧力も、インフレ懸念を煽っている。

第4は、気候変動を抑えようと脱炭素の動きが高まっていることだ。 それが、石油などの資源開発投資にブレーキをかけ、結果的に原油価格の高騰につながっている。

これらの要因が重なって、世界的にインフレ懸念が高まってきているわけだ。

とはいえ、世界の景気はまだコロナ禍から回復に入った段階で、それほど活況というほどではない。

それもあって、景気低迷下のインフレということで、「ディスインフレ」の声もあちこちで聞かれる。

1973年の11月から80年代前半にかけて、世界経済を襲ったのもディスインフレというものであった。

戦後ずっと1バレル3ドル以下だった原油価格が、第1次石油ショックで10~11ドルに急騰した。

そして、79年末から80年初にかけての第2次石油ショックで、原油価格は30~34ドルに跳ね上がった。

エネルギー価格が10倍にもなったから、公共料金を手始めにあらゆる価格が高騰した。

一方、大多数の石油消費国の人々の収入増加が追い付かず、世界の消費はガクーンと落ち込んだ。

それで、世界経済はマイナス成長に追い込まれた。 これが、マイナス成長下のインフレということで、ディスインフレといわれるようになった。

ディスインフレでも、物価高つまりお金の価値は下がっているから、金利は上がる。

ちなみに、70年代から83年にかけて、米国の長期金利10%台で推移し、瞬間16%18%を記録した。

当時の債券価格は紙切れ同然にまで売られていた。 その再来の可能性も否定はできない。

質の悪いインフレ到来で、生活防衛はよほど心しないと大変なことになる。