安きに流れれば、弱くなるだけだ

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人間も企業も、甘えたり安きに流れれば、それだけ弱くなっていく。

困難に直面して、その場をなんとかしのげば、一時の安寧は得られるかもしれない。

だが、それは状況を糊塗しただけで、困難を克服したわけでもないし、内部の強さを培ってもいない。

それが故に、人間も企業も長い目でみれば、弱体化の道を堕ちていくことになる。

企業でみてみると、現経営陣が自分たちのことしか考えず、現状維持で良しとしているところが、最近はやたらと目立つ。

その最たるものが、数値経営とかいわれるやつだ。 表面上の数字でもって株主の評価を得ようとする経営だ。

ROEに代表される利益率や、財務の健全さにこだわって、それで良しとしている企業の実に多いこと。

その一方で、10年先の大発展を目指した研究開発や設備増強投資には、および腰となっている。

あるいは、商社などで「3年して黒字化しない事業は見直す」といった、短視野経営が得々と語られている。

企業価値を毀損させず堅実な経営を全うしているという面では、確かに合格点を取れる。

これでは、ある程度の事業リスクを取ってでも、将来の大きな成長を期すといった企業本来の姿は、どこへやらである。

もっといえば、戦後の資金難の中、当時の日銀一万田総裁に逆らって、川崎製鉄の千葉工場に高炉を建設した西山弥太郎社長。

通産省による、日本の自動車業界を2大メーカーに集約させようとする政策に逆らって、四輪車事業に乗り出した本田宗一郎社長。

そういった事業家らしい経営者たちが、その後の日本経済の発展拡大を、どれほど加速させたことか。

残念ながら、最近の経営者たちは小粒になってしまっている。 とりわけ、大企業がだらしない。

日本経済の弱体化や国力低下を嘆く声が、最近はあちこちから聞こえてくる。

国民一人当たりの所得も、間もなく韓国や台湾に追い抜かれるともいわれている。

この状況を打破するには、個人も企業も自助自立の精神に立ち返って、より強くなるよう個々の努力を重ねるしかない。

高齢者層も、「自分は、もうそう遠くないからいいや」といって、知らん顔してはいられない。

年金や医療保険の財政が、どんどん厳しくなっており、自分は安泰だと言ってはいられないのだから。

どうするか? 国民も企業も自助努力を高めて、とにもかくにも日本経済を強くしていくしかない。

その先にしか、将来の生活も、年金や医療保険の持続性もない。 そう、肝に銘じよう。