間もなく10年が過ぎてしまうよ

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東日本大震災で、あのおぞましい福島の原発事故が発生し、今週で10年となる。

福島県民のみならず国民の間では、原発事故の恐ろしさや汚染問題を、嫌というほど思い知らされた。

それで、一般世論は脱原発の方向へどんどん傾いていっている感がある。

ところが、その間も日本のエネルギー政策は、原発の安全性確認と再稼働にずっと焦点をあて続けた。

国や産業界からすると、日本の電力供給で準国産エネルギーとして、原発の果たす役割を強く象徴してやまない。

なによりも、エネルギー資源の安定的な確保という意味では、原油やLNGなどよりもウランの方がはるかに安心できる。

そんなわけで、脱原発かエネルギー資源の安定供給かで、民意と国や産業界とでは意見が大きく隔たっている。

ここでは、どちらの意見に与するかは、横へ置くとしよう。 問題は、その二者択一で思考停止していること。

とりわけ国のエネルギー政策が、原発の安全性確認を急いで再稼働に漕ぎつけることに、こだわりすぎている点だ。

それ以外のエネルギー源について、日本はこの10年間というもの、ほとんど何もしてこなかった。

その間に、たとえば風力発電でみると、ドイツはもちろんのこと米国や中国でも、すさまじい勢いで普及が進んだ。

地形や風の安定性から、日本は適地が少ない。 海の遠浅が限られているので、着床式の洋上風力も難しい。

だから原発に頼るしかないといった論理でもって、風力発電の開発普及にブレーキをかけてきたきらいがある。

しかし、無為に過ごした10年間に、世界では風力発電という産業が驚くほどに巨大化していった。

そして、いまや風力発電は浮体式の洋上発電にシフトしようとしている。 風力も陸地の2~4倍も強いし、風も安定している。

浮体式なら、四方を海に囲まれた日本は圧倒的に有利である。 ところが、日本のメーカーはどこも手を引いてしまった。

漁業権の調整や、洋上で発電した電気の送電問題で、国のバックアップがそれほど期待できないからだ。

かつては太陽光発電といえば、世界の50%以上を抑えていた日本メーカーだが、ほとんど脱落してしまった。

代わって、中国企業が太陽光発電の分野でいまや世界を制覇するに至っている。

最大の要因は、FITと呼ばれる太陽光発電の買い取り価格を高く設定しすぎたことだ。

それに安穏としていた日本メーカーは価格競争力で韓国、そして中国メーカーに大きく引き離されてしまった。

今度は風力発電で、日本は世界の後塵を拝そうとしている。 再生可能エネルギーの開発普及に国の強い姿勢があれば、と強く残念に思う。

浮体式の洋上風力発電という、これからのビッグビジネスで大きなチャンスをものにできるのに。