セミナーの質疑応答で、時々この質問に出くわす。 質問者の疑問は、こんなところである。 われわれが株を買っても、その代金は株を売った人の手に移るだけではないか? それと、景気回復とはどんな関係があるのか?
もっともな指摘である。 われわれに株を売った人が、得た現金を預貯金に預けてしまえば、ただ株の持ち主が代わっただけで終わる。 景気とは何の関係もなく、株式市場での売買が行われたに過ぎない。
それでも構わない。 不況時や株式市場の暴落時に、長期の株式購入が相次ぐと景気は必ず立ち直ってくる。 大事なのは、われわれ長期投資家が買い出動することで、その効果は抜群である。
第1に、長期投資家が株買いを進めると、その分だけは売り物が確実に吸収されていく。 世の中で永久に売れるものなど存在しない。 売りを吸収した分だけは、下げ圧力を減衰させる。 つまり、先行きの株価上昇の時期を早めることになる。
第2に、われわれ長期投資家が企業を応援しようと、株安時にその企業の株式をどんどん買い仕込んでいくということは、株価が相当に戻るまでは売ってこない株主の登場を意味する。 これも、先行きの株高要因となる。
第3に、たとえ買った代金が売り主の手に入っていくだけとしても、市場の受け止め方は別である。 つまり、目先どう動くか知れない投資家が退場して、長期保有の株主が増えていると捉える。 それだけ、市場に買い安心感を与え株価上昇の要因を醸成する。
第4に、そういった状況変化を、株価は敏感にとらえるもの。 そして、どこかで上昇に反転する。 それは下げ相場の終焉を意味し、市場に新たな買いを誘引することになる。
ここまで書いてくれば、もうお判りだろう。 長期投資家の買いが入ってくることによって、どんな不況時や暴落相場の後でも、株価は上昇に向かいはじめる。
株価が上昇基調を高めると、心理効果や資産効果が出てきて、経済活動の現場はどんどん活気を帯びてくる。 つまり、景気はみるみる良くなっていく。
個人金融資産のうち、826兆円が預貯金に眠っている。 その1%が長期投資に向かうだけでも、8兆円の株買いとなり、株式市場そして日本経済はびっくりするほど活況となる。
この世界最大の眠れる資源を、なんとか有効活用したいものだ。