ギヴ、ギヴ、ギヴ、ギヴ、とことんギヴ、どこかでギヴン

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 これは、さわかみ投信の職場精神の第一に挙げられている表現である。 世の中で一般的にいわれるギヴ・アンド・テイクとか、あるいは最小限の出費で最大限の利益を獲得しようとする強欲ビジネスとは、まったくの別次元の価値観である。

 ギヴ、ギヴ、ギヴ、ギヴ、とことんギヴなんてのは奉仕活動の世界のもの。 優勝劣敗と適者生存が掟となっているビジネスの世界で、そんな甘っちょろい考えは通用しない。 そう言われるかもしれない。

 しかし、よく考えてみればわかる。 これは、ビジネスの世界のみならず人間社会がうまくまわっていくための真理でもある。 まして、長期投資では絶対無比の鉄則といえる。

 日々の生活で考えてみようか。 嫌なことはすべて周りに押し付けて、自分は楽をしようとか自分だけ得しようなんてこといっていたら、皆からつまはじきにされる。 しばらくは上手く泳ぎ回ったところで、いずれは追い出される。 そんな人間はどこへ行っても嫌われ、自滅の道をたどっていく。

 熾烈な生き残り競争に常時さらされているビジネス活動においても、自社の儲けだけを考えていると永続的な発展と繁栄はない。 自社の利益をとことん追求しようとすると、たとえばコスト削減で雇用を減らす一方で、取引先を泣かしたり消費者を騙してでも売り上げを伸ばそうとなる。

 そんな、自分だけ得しようの論理は通用しない。 雇用を切れば、それだけ消費が落ち込み、売り上げの拡大など望むべくもない。 取引先にしわ寄せを押し付けていると、そのうち取引相手がいなくなる。 最近の一流ホテルで発覚した食材の虚偽表示も、消費者から総スカンを食っているではないか。

 昔から近江商人のいう、相手よし自分よし世間よしの三方よしの精神こそが、商売を長続きさせる大原則だろう。 お互いさま、おかげさまの言葉が行き交うところに、皆の繁栄があるとする考え方だ。

 長期投資でいうと、世の中から無くなっては困る企業をとことん応援し、その企業の発展成長とともに資産を殖やしていく。 とにかく自分の利益を追いかけては、上手く相場を読んで自分だけ儲けようなどはしない。

 不況時や株価下落時に、多くの人がそういった企業の株を売って現金化を急ぐなら、われわれがその企業を応援すべく株式を片っ端から買ってやる。 どうぞこのお金をおつかいくださいといって、先ずは経済の現場へ資金を提供するわけだ。 経済はお金がまわれば、それだけ拡大発展するから、とにもかくにも誰かが資金を供給しなければならない。

 これも、世の中に良かれと思っての行動である。 しかし、結果的には応援したい企業の株を安値で買うことになり、長期投資の第一歩はごく自然体で踏み出せてしまう。 投資なんて安く買っておけば楽なものである。 まさに、ギヴ、ギヴ、ギヴ、とことんギヴの実行である。

 今日のインベスターズTV の生放送でも、そういうところを話したいね。