株式市場を活性化させ、その心理効果と資産効果とで日本経済を元気にさせるには、預貯金に眠る個人マネーを株式市場へ導入することが不可欠である。 とりわけ、長期スタンスの株式投資に預貯金マネーを向かわせることが重要である。
ここまでは、いつも書いていること。 今日は、その先のことに触れてみよう。 個人の預貯金マネーが長期の株式投資に向かってくれることが、企業経営をどれだけ健全化するかについてだ。
よく、企業の I R が話題となる。 そのほとんどは、機関投資家に対して企業の中長期計画や業績動向を説明すことにエネルギーが費やされている。 機関投資家はその名の通り、運用の専門家として企業の長期的な成長を応援するものと、一般的には認識されている。 したがって、企業にとっては名の通った大手の機関投資家に自社株を長期で保有してもらうことが、ひとつのステイタスとなっている。
ところが、機関投資家の実体は意外と短期指向の投資に追われている。 彼らのほとんどは運用成績を向上させようと躍起になっているから、どうしても目先の業績に関心が集中してしまう。 その典型が、四半期決算にやたらと神経を尖らせている姿だろう。 もちろん、海外でまだ残っている一部の機関投資家は、本格的な長期投資を求めて止まない。 しかし、そういった長期指向は恐ろしく少なくなった。
大半の機関投資家は、投資先企業に短期の業績向上をひたすら求める。 業績が予想を上回るとなれば、どどっと買ってくる。 予想に達しないと、即座に売りをかけてくる。 個人の短期投資とまったく変わらない。
面倒なことに、彼らは巨額の資金を運用しているから、目先の業績動向に反応したちょっとした買いや売りが株価には大きな影響を及ぼしてしまう。 それに付け込んで、売りをl仕掛けたりする輩がゴロゴロしているから、株価は必要以上に過剰反応したりする。
そんな株価動向に引きずり回されたら、長期視野の経営などできやしない。 それでも、株価は経営者の通信簿であるから、どの企業の経営者も機関投資家を含めた短期指向の投資家を無視するわけにもいかない。 これでは、まともな経営は望めない。
そこで、個人の預貯金マネーの出番となる。 預貯金に眠る783兆円のたとえば10%でも長期の株式投資に向かってくれたら、状況は一変する。 10%の78兆円といえば、外国人投資家が1992年から延々と日本株を買い越してきた64兆円を大きく上回る。 日本株市場の株価形成が長期投資主体となることは間違いない。
5年10年といった時間軸で応援してくれる個人投資家が株主の中核となってくれたら、企業の長期経営にとってどれだけ心強いことか。 また、企業がしっかり長期戦略に立った経営を推進してくれることで、長期投資家の財産づくりもはるかに確固としたものとなる。 もちろん、日本経済にとってもプラスとなり、すべて良しなのだ。
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