今週に入って、インフレや金利上昇のトレンドが幾分スローダウンの気配を見せている。
それに安心したか、株式市場も先週までの狼狽売り下落相場から一転して、戻りを狙いたがっている。
まあ金融市場はじめ株式市場などの目先の展開はどうであれ、大きなトレンドは変わらないだろう。
すなわち、インフレ動向も金利上昇の流れも、まだまだ続くということだ。
いま世界を覆ってきているインフレ圧力は典型的なコストプッシュ型で、そう簡単には収まらない類のもの。
たとえば、原油や天然ガスの値上がりは、ロシア軍のウクライナ侵攻を受けて、ロシアへの経済制裁によるものだけではない。
それだけだったら、ウクライナ問題が収まると、ロシア産の原油や天然ガスの供給が復活し、供給不足からの価格上昇圧力は鎮静化するはず。
だが、この3年ほどで、地球温暖化と異常気象に対処すべく、先進国中心に脱化石燃料の動きが急速に高まった。
年金など機関投資家運用も、脱炭素をスローガンに、石油や天然ガス関連企業への投資を縮小してきた。
それがエネルギー関連企業をして、石炭はもちろん原油や天然ガスの開発投資を大幅に削減させてきた。
この事実を忘れてはなるまい。 世界のエネルギー問題は、ロシア軍によるウクライナ侵攻だけではないのだ。
資源などの開発投資はずっと高水準に継続されてこそ、安定的な供給体制が維持できる。
しかるに、一度そのペースを落としてしまうと、元の水準の供給体制に戻すまでには2~3年はかかる。
その間に、既存の設備で増産を無理したりすると、思わぬ大事故も起こり得る。
どちらにしても、供給不足がずっと続くことになる。 つまり、エネルギー価格は高水準に張り付くわけだ。
エネルギー以外の資源開発も、コロナ問題で世界経済が落ち込んだのを受けて、開発投資が中断ないし大幅に削減されてきた。
そこへ、コロナ問題や米中の貿易戦争などを受けて、世界の供給体制が分断の方向をたどっている。
これまでのグローバル化指向から、自国ないし自国近く主義にシフトしてきているわけで、これらもコスト上昇要因である。
つまり、コストプッシュ型のインフレ圧力は、相当に根の深い問題と考えておくべきである。
となると、世界の金利上昇もインフレとの闘いとなって、想像以上の水準にまで行ってしまうのだろう。
もうひとつ、インフレは実体経済に直結している。 インフレ高進で金融バブルなどは、いとも簡単に吹き飛ばされよう。
われわれ長期投資家は、金融バブル崩壊は軽くやりすごせる。 しかし、インフレには真っ正面から対応する必要がある。