一般的に投資というと、どのくらい儲かったとか、何％にまわっているとかで、お金の計算がついてまわる。　機関投資家はどれだけの成績を上げているかが、預かり資産の獲得に直結するから、はじめから終わりまでお金の計算ばかりである。

　われわれの長期投資は違う。　世の投資家のように、お金お金でお金を追い回さない。　投資収益なんて後からついてくるだけよと達観し、それよりも今やるべきことをしっかりやっておこうとする。

　どちらがより合理的な経済行動かは明白である。　お金お金で目を吊り上げたところで、自分だけ儲かる話がそうそう転がっているわけではない。

　誰かが儲かるというのは、誰かが損することでもある。　自分だけ儲けようとすれば、そんな奴に儲けられてたまるかと、周りの皆はガードを固めるに決まっている。

　いってみれば、お金の奪い合いを株式市場などマーケットでは延々と繰り広げているわけだ。　そこで、うまいこと儲けを確保していくのは並大抵のことではない。　だから、投資は難しいということになる。

　その点、長期投資は経済活動のパイを大きくすべく、お金を投入してやる。　先ずは皆の分け前を殖やすことで皆に喜んでもらう。　全体のパイが大きくなれば、ありがとうの言葉とともに、分け前の一部が報酬としていただける。　つまり、投入したお金が殖えて戻ってくる、それが長期投資のリターンである。

　きれいごとを並べているわけではない。　それが一番手っ取り早いお金の儲け方である。　自分だけ儲けようなんて、そう甘くはない。　しかし、皆が豊かになれば放っておいても分け前は戻ってくる。　まさに、急がば回れである。

　この当たり前の当たり前が、世の多くの投資家はどうも理解できないようで、皆あくせくと相場を追い回している。　相場動向に一喜一憂する暇があったら、どう世の中にお金をまわしてやるかを考えればいいのにね。

　お金をまわしてやるというのも、実は簡単なことである。　株価が大きく売られているような時は、皆が現金化を急いでいるわけだ。　つまり、経済の現場から資金が引き揚げていく。　そういった時に買いを入れてやるだけで、もう立派なお金のまわし方となる。

　そこで、ひとつだけ絶対に重視しなければならないのは、どの企業の株を買うかということ。　この選別が経済の質を高めることに大きな影響を及ぼすわけで、長期投資家に課された重要な使命である。

　そう、良い世の中をつくって行くという方向で頑張っている企業を厳選して、その企業を応援すべく皆が売っているところを敢然と買いに行くのだ。　後は、のんびりと応援企業が頑張っているのを優しく暖かく見守っていればいい。

　もう、それだけで長期投資になってしまう。　この単純さが大事である。