この10日間の株価波乱の引き金となったひとつが、中国経済の不調があげられよう。 最近の新聞報道でも、中国やインドそしてブラジルあるいはロシアの成長率鈍化を指摘する記事がやたら多い。
それらの記事をていねいに読んでみよう。 どれも成長率が期待していた水準に届かないだけで、プラスはプラスである。 別に、マイナス成長になったわけでもないのに、なにをそうまで騒ぐのか?
たとえば、中国経済の成長鈍化という見出しのすぐ後ろには、7%後半の成長と書いてある。 インドだって、6%から7%の高成長から5%前後にスローダウンするぐらい。 なにが、そう問題なのだろう?
新聞などメディアは、現在の事象をことさら大きく報道するのが仕事。 それでもって、購読数を増やしたり視聴率を上げようとする。 だから、もうダメだ、世の終わりだの報道が毎日のように発信される。
一方、マーケットや投資家は期待収益率でもって投資判断を下そうとする。 中国経済が9%あるいは10%の成長もあるぞとなると、収益期待が高まるから皆ドドッと買い群がることになる。 半面、8%予想が7.8%に下方修正されただけでも、収益期待が下がるから売りとなる。
これらのどちらも、われわれ長期投資家の価値観とは遠く離れたものである。 マーケット追随型の投資家や投機家ならいざ知らず、長期投資家は常に自分の行動基準を持っている。
いま起こっていることをヒステリックに騒いだところで、そんなもの既に株価など市場価格に織り込まれている。 株式市場が暴落とかで大騒ぎするよりも、下がった株価に対してどう行動するかが問われる。
また、新興国の成長率鈍化に過剰反応するなど、短期的な収益期待で右往左往することはない。 新興国のみならず世界中が、今の生活水準をもっともっと高めたいと懸命である。 その成長意欲というかエネルギーは計り知れないほど膨大で、誰も止められない。 そう、長期投資のチャンスは無限に広がっているわけだ。
そう考えると、目先の統計数字でマーケットが過剰反応するたびに、長期投資家らしい行動が問われることになる。 いまのように大きく下げたら、たっぷり買い仕込みを進めればいい。 どこかで大きく噴き上がったら、薄く薄く売り上がって利益確定するも良しだ。 下がったら、また応援の買いを入れるだけのこと。
ひとつだけ忘れてならないのは、投資対象企業をしっかり選ぶこと。 決して、どの企業でもいい、ただ株価上昇の波に乗れればいいといった、ダボハゼ的な行動はすまい。 長期投資家の名が廃る。