低成長の背景

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 もう10年余り、日本経済はまったく拡大成長していない。 デフレ状況が続いているから、実質成長率ではプラスマイナス0といったところをうろうろしているが、名目成長率はマイナスである。 

 経済活動はすべて現在の価格で動いている。 それを名目値というが、要するに時価ということだ。 時価でみた経済活動がジリ貧状態にあるのを、身近に実感するのは給料やボーナスである。 読者の皆さんの多くは、この10年間ちょっとで、どれほど満足のいく所得増加を享受して来れただろうか。 おそらく、首をひねる人が多いはず。

 実際の経済活動が拡大せず、むしろ縮小傾向にあるのは絶対にまずい。 年金など社会福祉関連費はどんどん増加しているし、景気浮揚予算のばら撒きも続いている。 その一方で、税収入はマイナス成長もあってずっと減少している。 これでは、財政赤字は拡大するし、国債の増発もとまることはない。

 一番の問題は成長率が低いどころかマイナスであることだ。 成長率さえたとえば4%ぐらいにまで高まれば、税収は大幅に伸びるから財政赤字問題も解消に向かう。 もちろん、給料やボーナスも増えるだろうから、消費も高まり更なる成長加速要因となっていく。 すべてが、プラスの方向へ向かい始める。 

 では、どうすれば経済成長率が高まるのか? 減税である。 香港ではないが、個人の所得税や法人税を大幅に引き下げてやれば、富を創出できる人々が活発に動き出す。 それが回りまわって、経済活動拡大につながっていく。 経済活性化の基本である。

 もうひとつ、規制緩和と民営化を断行することだ。 日本の場合、なにもかも国つまり官が指導していく方向にあるが、ここに大きな問題をはらんでいる。 非効率でコスト意識に欠けるのは、昔からずっといわれ続けている。

 あるいは、省益拡大と天下り先の確保に余念がないといった問題点も、がん細胞みたいに日本経済社会に深く根を張っていっている。 だから、行財政の抜本的な改革を断行しなければならないという主張は、まさにその通りである。

 忘れてはならないのが、官にはビジネス感覚がまったくないことだ。 調整とか指導の専門家かもしれないが、アニマルスピリットに欠けた人たちが経済活性化の先頭に立っても、なんら効果はない。 日本経済の活性化を急ぎ成長率を高めるのを最優先とするのなら、今すぐにでもできるところから民営化を片っ端から進めることだ。

  

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