われわれ長期投資家からすれば、
5年でも10年でも先々に夢と期待を膨らませられる企業は、
もう絶好のリサーチ対象となる。
そういった夢の多くは、
前々から期待されていた技術がいよいよ実用の段階に入ったというニュースや、
信じられないような新技術が開発されたとかでマスコミが大々的に報道するケースもある。
そんな中、
長期投資家が一番力を入れるのはもっと地道な技術開発である。
工業原材料とか素材といった分野での開発動向を追いかけるのは、
実に楽しいものがある。
もちろん、
こちらは研究者でもないから技術のどこまで理解できるかなんて挑戦はしない。
それよりも、
これは面白そうだと思える技術をある企業が時間かけて必死に開発しているのを見守りながら、
こちらはその技術が世に出てきたら人々の生活はどう変わっていくのか、
あれこれ推測する作業を続けるのだ。
こういった夢の膨らませかたも結構楽しいものだ。
たとえば炭素繊維。
もう30年以上前から夢の新素材と騒がれていた。
世界中の名だたる企業が炭素繊維の実用化に向けて技術開発競争に雪崩れ込んだ。
しかし、開発は難航し海外の企業は次から次へと脱落していった。
最後まで残ったのは、日本の数社のみ。
何とか実用化にまでこぎつけたものの、値段が高すぎる。
鉄よりはるかに軽く、はるかに強いといっても価格が高すぎては、
誰も使ってくれない。
そこで、日本の数社は懸命に炭素繊維の用途開拓に挑んだ。
思いついたのは、釣竿やゴルフシャフトといった趣味の分野での需要開発。
趣味の分野であれば、お金に糸目をつけないユーザーも大勢いる。
とにかく炭素繊維の使用用途を広げて、
量産効果によるコストダウンを急ぐしかない。
そういった地道な市場開発努力と徹底的なコストダウンで、
炭素繊維は航空機や自動車といったビッグユーザーを開拓していった。
その間にも、株式市場では幾度となく炭素繊維を囃した相場の波が押し寄せた。
炭素繊維という夢の工業素材をずっと追いかけて、
関連企業の株を安値あるごとに拾ってきたきた長期投資家にとっては、
大相場の都度ご機嫌の投資リターンを確保できたものだ。
夢はまだまだ続いている。
かつては時間をかけてジックリ固めるしかなかった炭素繊維だが、
最近は製造技術の進歩によって驚くほど短時間で製品化できるようになってきている。
その横で、
ボーイング787の相次ぐ本格生産延期で炭素繊維の話題は株式市場から遠のいている。
こんな感じで、
長期投資家はいろいろな技術開発に挑戦している企業を5年10年と追っているわけだ。
ずーっと追っていると、
その企業の技術に対する文化というかDNAといったものも見えてくる。
よく日本は技術で生きていくといわれるが、
技術に賭ける企業魂といったものは長期投資家にとっては、
たまらない魅力である。
明日は予定が詰まっており、ブログお休みします。
また、来週ね。
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