株価収益率を英語で、Price to Earnings Ratio(PER) という。
そのPER数値でもって、投資家や市場は株価水準を割安とか割高だと投資判断するのが一般的となっている。
また、米国株はPERが20倍になっていて割高だが、日本株はPERが16倍と割安でまだ買えるといった使い方もする。
そういったPER数値の活用だが、本当はどんな意味なのか知っているかな?
1960年代の後半に、つまり米国経済の黄金の50年代60年代の最後に、成長株理論というものが勃興してきた。
それまでの株式投資における投資判断指標は、配当利回りであった。
すなわち、債券の流通利回りに対し、この企業の配当利回りは割安か割高かといった判断だった。
その判断尺度が、どうも合理的でない。 債券は借金証文でしかなく、投資家が得るのは付与される利金のみである。
一方、株式投資においては企業の利益成長がもたらす投資価値の高まりという付帯利益がついてくる。
それらも株価判断に上乗せされてしかるべきである。 配当利回りだけでなく、利益成長もだ。
投資はもともと、投下した資金に対してどれだけのリターンが得られたかである。
そう、投下元本を回収して、その間にどれだけのリターンが手元に入ったかだ。
となれば、将来にわたって期待できる利益をも、投資判断尺度として織り込んでいいはず。
そこで生まれたのが、PER理論である。 すなわち、3年先5年先の予想利益を投資判断に織り込もうということだ。
たとえば、PER5倍ということは、この企業の株価は予想利益でみると、5年で投資元本を回収できることになる。
ならば、この企業への投資において、これから5年のリスクを取れるかどうかだ。
当時、米国経済は絶好調が続いていて、成長率は4%ちょっとに対し、インフレ率も長期金利も3.8%前後だった。
そういった素晴らしい経済状況において、PER3倍と4倍とで、侃々諤々の投資判断議論が闘わされていたのだ。
そう、この企業への投資において3年ぐらいのリスクは取れる、すなわちPER3倍は割安である。
しかし、PER4倍ともなれば、投資元本の回収は4年先となって、4年ものリスクを取って良いものだろうか。
そういった議論が、投資運用の現場で熱く闘わされていた。 株式投資のリスクを期待利益でカバーできるかどうかだ。
その点、昨今では、PER16倍とか22倍とかの数字が気楽に飛び交っている。
果たして、これだけ不透明感が高まっている世界経済で、16年先や22年先までのリスクを取って投資を展開できるのか?
ともあれ、投資は投下した元本を回収して、どれだけの収益を上げられたかだ。 そこは、しっかり押さえておこう。
