前回、大逆回転という表現を使ったが、それもこれも54年の経験をもっての発言である。
1971年から世界の運用現場に身を置いてきたが、その間に世界のマーケットや経済は驚くほどに変化した。
それを実体験してきての主張が、金融マーケット中心に行き着くところまで行った、そろそろ大逆回転が始まるぞだ。
逆回転というか、いよいよ経済合理性が働いて、様々な反動が出てくるぞという読みである。
こちらは、1970年代の強烈なインフレと金利高騰を経験している。
あの当時、世界の株式市場はもちろん債券市場も、ズタズタに売り叩かれていた。
それが、80年代に入ってからというもの、世界のマーケットは歴史に例をみない上昇相場を続けて今日に至っている。
その背景には、先進国中心に過剰流動性が常態化し、そこへ年金マネーの急増によるコンスタントな買い増しがある。
いま世界の機関投資家運用者たちの大半は、40年越しの株式や債券の上昇相場しか知らない。
その上に、彼らは毎年の成績を競うが故に、自分の判断でマーケットから離れることは許されない。
いわゆる、音楽が鳴っている間は踊りを続けなければならない立場にある。
投資運用であれば、どこかで利益確定の売りを出して、投下資金の回収を図るのが運用者の責任である。
なのに、機関投資家の運用者たちはずっと続いている上昇相場で、利益確定の売りを出すリスクなんて取れない。
下手に売って、マーケットがそのまま上昇を続けたら、成績で置いてきぼりを食らう。
そんなリスクを取るよりも、おとなしくマーケットの上昇についていった方が、よほど安全である。
世界の運用マネーの大半を握る機関投資家の運用者たちが、40年越しの上昇相場にずっとつき従う姿勢を崩さないのだ。
かくして、カネ余りバブル高のマーケットが崩れることなく続くことになってきたわけだ。
80年代の日本のバブルの頃、「赤信号みなで渡れば怖くない」があったが、その赤信号意識すら誰も持っていない。
そういった40年越しとなっている世界の株価や債券の上昇バブルに対し、いよいよ経済合理性が働きだそうとしている。
現に、世界あちこちで低所得化と貧困化が深刻となっており、それが根の深いインフレを台頭させている。
そこへ、トランプの自国第一主義と関税引き上げが乗っかってきた。 どちらも、世界貿易を阻害し物価高を招く。
さらには、企業の収益動向にもマイナス要因となり、市場金利を中心に上昇圧力を高めよう。
これら経済合理性の刃が、40年越しの上昇相場に襲いかかってこようとしているのだ。
最初は静かに、そのうち強烈にカネ余りバブル高のマーケットを叩き潰すことになるのだろう。