投資運用において、債券投資は金利裁定商品の典型であり、債券市場は金利動向に逆らうことはない。
つまり、金利が上昇トレンドに入ってくれば、債券相場は下降しだす。 だから、一刻も早く売っておくに限る。
逆に、高金利状況によって景気後退が懸念されるタイミングでは、債券の買い仕込み機となる。
ともあれ、債券投資において金利動向は絶対であり、それに逆らったら破滅しかない。
一方、株式投資は金利裁定という側面もあるが、個々の企業の業績動向などプラスアルファも乗っかってくる。
それもあって、株式市場なかでも個別株に関しては、金利動向をも乗り越えた動きをすることが往々にしてある。
そこで登場してくるのが、投資家の読みというか思惑である。 市場全体の動向に対する思惑は相場観ともいう。
この先、株価全般はこれこれこういった材料を囃して、上昇トレンドを描くだろうといった読みだ。
いまだったら、インフレ圧力で金利は上昇してきているが、世界の景気も株価もそう大崩れしないだろうといった読みだ。
あるいは、個別株でみるとずいぶん割安感が出てきている、そろそろ買いに入ってもいいのではといった感触だ。
そのような読みというか思惑が錯綜するところに、株式投資の面白さというか人を惹きつけてやまないものがある。
欲得まる出しの、きわめて人間的な株価形成が株式投資の醍醐味である。
ところが、最近の株式投資は年金などを運用する機関投資家中心に、インデックスやインデックス先物のディーリング運用が主体となってきている。
それも、コンピュータを駆使した機械的な運用が、この世の春を謳歌している。
1秒間に1000回を超す売買を繰り返すなど、もはや思惑などが顔を出す余地はない。
そうなってくると、逆説的ではあるが、ますますをもって大きな読みが決定的に重要となる。
大きな読み? そう、目先のマーケット動向を超えた、経済合理性を重視した読みといってもいい。
すなわち、われわれ本格派の長期投資家がいつもやっている読みだ。
すなわち、ひたすら金融緩和の深掘りでやってきた世界経済の運営に、インフレという刃が突き付けられたのだ。
40年越しのマネーのバラマキによる経済運営が行く着くところまで行ってしまった。
その反動が、じわじわと世界経済や金融マーケットにのしかかってきているのだ。
このあたり、今年の長期投資家日記の大きな焦点となるのだろう。