よく、インフレが進むと債務者の負担が相対的に減っていくといわれる。
だから、インフレを予見するなら借金をどんどん増やしておけ、そういった見解もまかり通っているわけだ。
あるいは、インフレ・タックスといって、国はインフレというお金の価値減価で、借金負担を軽減させることになる。
その代わり、国民にはインフレという負担がのしかかってくるわけで、違う形での税負担を負わされるというわけ。
たしかにインフレ下では、お金の価値が下がるから、より多く稼がないと生活費を賄っていけない。
一方、借金の方は額が固定されているから、お金の価値が下がった分だけ返済の負担は楽になる。
となると、インフレに乗って十分に稼げるならばという条件が付いて、はじめて借金負担は軽くなるのだ。
逆に、十分に稼げなかったら、インフレで生活や企業経営は苦しくなり、なお借金の負担は重くのしかかってくる。
では、日本の政府や日銀はどうなるのだろう? 1200兆円を超す国の借金は、インフレ分だけその重さは軽減されるよう。
しかし、毎年の予算編成で40%前後を国債発行で賄っている現実に対しては、厳しい将来が待っている。
インフレには必ず金利上昇がともなう。 お金の価値が下がるのだから、それを賄うべく、金利は上昇して当然である。
金利上昇が、国債の安易な発行にブレーキをかけるだけではない。 1000兆円を超す既発行分の国債の利払い負担も膨れ上がるのだ。
現に財務省が、1%の金利上昇で国の利払い負担は、3.7兆円も増えると試算している。
米国では、もう既に政策金利は2.25%も上昇している。 日本は日銀が強引に金利上昇を抑え込んでいるが、そういつまでも世界的なインフレ圧力に逆らえまい。
ということは、インフレによる金利上昇で国の予算編成そのものが成り立たなくなる? そう、なりかねないのだ。
日銀が国債を買って吸収する? これまでも事実上の財政ファイナンスを実施してきて、日銀の財務は日本の国内総生産(GDP)の1.3倍にも膨れ上がっている。
それを、さらに加速させるというのか? ますますをもって、インフレと金利上昇を煽ることになるだけだ。
ことほど左様に、日本の国家財政は酷い状況に陥っている。 それに対し、インフレと金利上昇という刃が襲いかかって来ているのだ。
収拾のつかない大混乱は、もう待ったなしのところまで来ていると覚悟しよう。