日銀の黒田総裁は大幅な金融緩和をまだまだ続けると発言している。
日本の場合、もう30年近くにわたって金利をゼロ同然にまで下げつつ、大量の資金供給を続けている。
大々的な金融緩和政策に拍車をかけ続けているのが、黒田総裁である。 もう、8年になる。
もともと金融緩和政策は経済の現場に低利の資金を大量にまわしてやり、それが経済活動全般を活性化させるのを期待してもの。
ところが、さっぱり効果は上がっていない。 その理由は、日本がデフレ現象に陥っているからだという。
デフレ、つまり消費全般が低調で、企業としても低価格の商品やサービスでないと受け入れられない。
そんな状況下では、どの企業も拡大再生産につながるような積極的な投資などには、なかなか手を出せない。
だったらということで、国は企業に賃金を上げろと要求しだした。 それでもって、消費の底上げを狙ったもの。
企業にとっては、最終製品やサービスの価格は上がらない中、賃金を上げるというのは厳しい話。
それが、企業にさらなる防衛的な経営を迫る悪循環となり、日本のデフレは根が深いとされるわけだ。
発想を変えよう。 そもそも日本の消費低迷の原因は、大きく分けるとふたつである。
ひとつは、モノへの消費が一段落した成熟経済では特有の消費減退である。
それに対しては、いつも書いているように、モノを超えて生活の質や豊かさを求めた方向で、お金をつかう文化を高めるに尽きる。
もうひとつは、超低金利そしてゼロ金利政策の弊害である。 とりわけ、この政策の罪は重い。
日本の場合、個人の貯蓄性向を世界でも際立って高い。 現に、個人金融資産のうち、預貯金残高は969兆円に上る。
経済規模の1.8倍もの預貯金残高を抱える国なんて、どこにもない。 しかし、それが日本の現実である。
そんな日本で、ゼロ金利政策を推し進めて家計の利子所得を奪い続ければ、消費は減退するに決まっている。
デフレで企業経営は大変だとかいう前に、金利を通常の3%~4%に戻したら、個人消費はどう変わるかを検討してみるといい。
ちなみに、この30年間の個人預貯金残高の平均は689兆円である。 (日銀速報から計算)
そこからの利子収入は,3%で16兆円(税引き後)、4%で22兆円あったはずと計算できる。
逆をいうと、この30年間、ずっと毎年16兆円から22兆円もの消費能力が奪われてきたわけだ。
なんとも惜しいと思わないか。 それだけでも、経済成長率を3%~4%分は高めていた想定ができるのだから。
そう、ゼロ金利政策が日本のデフレを長引かせた最大の要因といっていいのではなかろうか。